もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ




不穏な気配に気がついたのは学園に着く少し前だった


「いやな予感がするな」


学園の方から漂う、火薬のにおい
そしてそれに混じる鉄の・・・血のにおい
何かあったのだと思わざるを得なかった


「かなさんは平気だろうか・・・?」


小平太がつぶやいた
きっと後輩たちが守ってくれているはずだが、未だ経験不足のはず
私たちは学園への道を急いだ




学園はどこかの忍者に攻め込まれていた
だが、においはくのたま長屋から来ており、忍たま長屋は嫌に静かだった
急ぎくのたま長屋へ回ると、くのたま五年の一ツ瀬 朱が、かなさんに動きを封じられた所だった
いくら好意を寄せているとはいえ、その行為に衝撃を受けたのは私だけではないはずだ
守られるべきものが守るものの動きを封じるなどということは、普通有り得ないのだから

案の定、一ツ瀬はかなさんを押しやると、さすが五年生といったところか、急所を外すように体をずらし相手の息の根を止めた
・・・もっとも、一ツ瀬自身死にそうだがな



私たちは敵を片付けると、五年生の元へ近寄った
殆どがその場に座り込み、既に限界といった様子だったが、久々知だけは一ツ瀬に近寄り、顔をのぞき込んでから、信じられないと言ったように少し動きが止まるも、すぐ我に返ると怪我の処置をしようとしていた



「体が限界なのだろう?私がやろう」


久々知は考えるそぶりを少し見せたが、すぐにすいません、お願いしますと言った
私はクナイの刺さった一ツ瀬を揺らさないよう抱き上げると、医務室へと運んだ




奇跡ではなく、絶対を望む







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