もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ




天女の噂を聞きつけたどこかの城が、かなさんを奪いにきた
相手はプロの忍者で、こちらは生憎風邪をひいていた善法寺先輩を除いて六年生は全員不在
くのたまの六年生も居るには居るが、くのたまは絶対数がそもそも少ないから、正直心もとない
けれど、かなさんを守りきる為には、この状態で切り抜けるしかなかった


「まずいな・・・」


三郎が呟く
誰がみてもこちらは満身創痍
対して、まだ敵は無傷がこちらの人数と同じ数ほど残っている
正直、勝てる見込みは無いに近かった


「それでも、かなさんを守るためには、切り抜けないといけないんだ」


力の入りづらくなった手で、再度クナイを握り締める

その時だった
障子が開き、かなさんの声がしたのは


「・・・もうやめてっ!」


振り向けば、かなさんは朱に抱きつく形で居た
朱は目を見開き、そしてすぐに唇をきゅっと引き結んだ
見据える先には朱に近づく敵の忍者

危ない、そう思っても体は動かなかった


そこからは全てが遠くの事のように見えた
朱はかなさんを突き飛ばすと、体を少しずらしながら、クナイで敵の首を掻き切った
血が吹き出し、どさりと音を立てて敵が倒れる
そして、朱もふっと崩れ落ちた


どさり
朱の倒れるその音で現実に引き戻された


「朱・・・?」


今すぐ駆け寄って、朱の様子を確かめたかった
だが、まだ敵が残る中で、そんな事できなかった
俺は再度クナイを握り締めると、敵を見据えた

その時
奥に居た人影が倒れた
目をこらした先には、学園から出ていたはずの六年生たちだった


その姿に安堵して、思わす力が抜けそうになる体を叱咤すると、俺は朱のもとへ近づいた

朱の近くでは突き飛ばされたかなさんが泣きながら朱ちゃん、と繰り返していた


君 死にたまふことなかれ








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