王子の目的


それはいわゆる、他の国の魔術師。
そんな輩が一族の名を語り、次期国王である王子の周りを固めようとし、そして現国王を操り意のままに動かしている。
それが何を意味するのか。
何が目的であるのか。
ゲームをやらない楓香にとっては、大方富やら土地やらが目当てだろうという憶測しかたてられないのだけど。
王子の国は比較的大きいらしいから、その豊かな物資が欲しいのかもしれない。
たくさんいる国民を利用して、働かせて、多くの利潤を得る気かもしれない。
そのいずれにしても、やっていることは決して許されることではない。


「正直、魔術師の素性がわかり次第戦争になりかねない状況だ」


魔術師を止められなかった一族を責め、
魔術師を管理できなかった国を攻め、
数々の暴挙を許すまじと最もらしい理由を掲げて、それを上回る暴力を振るう。
そこまで予想した楓香は何気なく問う。


「…んで、お前は最終的に何をしたいンだ?戦争か?」



もし仮に万が一。
この目の前の王子が父が受けた屈辱を晴らすべく戦争を始めるために魔女を探しているならば、楓香は王子に荷担してやる必要がなくなるのだ。
人殺しはよくない。
例えきれいごとだと思われても楓香はそう思っているから。
誰が報復の手伝いをせにゃならんのだ、と。
しかし、王子は首を横に振る。



「いや、できる限りで起こるであろう戦争を回避したい。仮に魔術師が一国家の刺客であっても、国の民に罪はない。
…報復はしてやりたいが、幸い我が国に死者は出ていないし、被害という被害は牢屋送りか魔女の追放のみだ。国政にも今のところ手を出されている訳でもないからな。
最終的に罪を認めさせて多少ペナルティを与えられれば十分だ。…あくまでも現時点で、の話だがな」


それは仮に国が損害を負ったら、仮に死者がでたら、国としてそれ相応の対応をしなければならないと言った意味合いの隠った言葉だった。
だが、まっすぐ語る瞳は揺らぎがない。
怯む様子も迷う様子もない。
決意は然りときまっているらしい王子。
嘘ではないと、見破るのは容易かった。



「…なるほどな」


睨むように見つめながら聴いていた楓香だったが、それだけわかれば十分と、鋭い眼光を止めてため息をつきながら確認をする。


「…実質、本格的に害を被ってるのは追放された魔女だけッてことか。ンで、お前は魔女を連れ戻すために探している」
「そうだ。最優先事項は魔術師の討伐だが…魔術師はなんとしてでも城内から魔女の一族を排除したがっていたからな、ひょっとしたら何か魔術師の弱点でも握ってるんじゃないかと思って脱獄して情報を漁っていた訳だが…」
「一族の方は収穫がゼロ」
「その通りだ」
「残る魔女が行方不明」
「そうだ」
「…難しいな。
魔女が追放される場所については手がかりがねぇのか?例えば先だってどこに追放されるかの通達があったとか」
「無い。追放といってもただ国外に出ていけという命が出ただけで、具体的にどこに行けという指示はない。あくまでも国内から姿を消せばよかっただけだからな」
「………手がかり皆無か…、」



頭をがしがしかいて、改めて現状を考え直してみる。
魔術師に操られた国王、投獄された王妃、騎士家臣、追放令によって姿を消した魔女と、脱獄をして魔女を追いかけてきた王子。
魔術師の手がかりは魔女が握っている、"かもしれない"。
魔女を探し出す手立ては、無し。



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