シンキングタイム


「んで、これからどうすンだお前は」
「うむ、どうしような。お前に何か良い案はないのか楓香」
「ねぇよ。」
「それにしても美味いなコレ」
「山田さんの手作りだからな。つか話をそらすな馬鹿王子」


かちゃかちゃと。
皿とスプーンがぶつかり合って音が鳴る。
王子は出てきた料理に感激したようで、今後の魔女捜索に尽力してやろうとしている楓香の言葉を聞いているようで聞いていない。
ただただ本当に美味しそうに。
喫茶店のオーナー、山田珠代の作ったオムライスを頬張るばかり。


「オイ楓香、珠代を呼んでこい。おむらいすとやらの感想を言いたい」
「珠代って言うな山田さんと呼べ。
つか何でアタシがお前の従者みたいなコトしなきゃなんねーンだよ。山田さんなら放っときゃ来るから黙って食ってろ」
「そうか、ならいい」
「……ムカつくなコイツ」


本当。
料理人に礼を言うなぞ、どこの世界の人間だコイツは。
それが高級料理店とかならまだわかるが。
お金持ちやらエリートサラリーマンとかならわかるが。
どこの馬の骨とも知らない見た目ただの青年が、喫茶店のオーナーをわざわざ呼んで感想を言うとか。
なんだ。
なんなんだ。
後継者として城で育てられたらしいこの王子の舌を唸らせているのだから、確かに山田さんの料理の腕は凄いのだとは思うが。
正直楓香としては、あんまり人と関わってほしくない王子である。
出来れば他人との接触を避けてほしいところだ。


「つかお前、山田さんに感想ッて何言うつもりだよ」
「質素ながらに美味い飯であったと。」
「失礼極まりねぇなオイ」


少し黙ってろと言うと同時、タイミングよく店の奥から珠代がやってきた。


「あら王子君、意外と食べるの早いんだねぇ。おかわりしたかったら遠慮なく言いなよ、今日最後のお客さんだしね」
「ありがたい。頼む珠代」
「あいよ」
「いやいや山田さん、注意してくれていいからね年上に呼び捨てとか。
つかおかわりさせなくていいから」
「いいのいいの。どうせ家帰っても呑んだくれの相手しなきゃなんないだけだし、名前呼びされるなんて若返った気分になれるしねぇ」
「でもさ、」
「本人が良いって言ってるんだ、呼び捨てで構わないだろう」
「お前黙ってろよ」


サービスで出してもらったお茶に口をつけて。
新たなオムライスがでてくるのを待たずに、暫しの作戦会議でも開始しようかと思う。


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