洋服選び


「お前身長何pだ?」
「何だいきなり」
「服のサイズの目安にでもと思ったンだよ。ホラ答えろ」
「182。」
「…………ほぅ」


さらりと答えた王子に若干のじと目。
なるほど、道理で朝から首が疲れるワケだ。
楓香は瞬時に考える。
楓香は女の子だが、身長が170pある。
せい、人と話すうえであまり見上げるといったことをしない。
大体日常的に会話をするのは女の子が多いし、男と話したところで、楓香には楓香と身長がほとんど変わらない奴しか知り合がいないので。
もう一度言うが、見上げるということをしないが故にその動作になれていない。
だけれど、王子との間に身長差が12pもあれば少なからず見上げるカタチ、
首もこるというものだ。


「ンならサイズはこのくらいか…、」


がしゃがしゃッと、かけてあるハンガーをかき分けて、いい感じのデザインの服を散策。
もちろん服は楓香的センスで選ばれる。



「お、コレなんかどうだ?」
「どれだ?」


ひゅっとハンガーごとTシャツをかっさらって王子の前に出す。
Tシャツに描かれているのは、某アニメに出てくるマスコットだ。
一色で描かれる絵が楓香のお気に召したらしい。
王子はふむ、と一言唸って。


「…思ったほどセンスは悪くないな。
お前がいいと思ったので俺は構わない。任せる」
「…ン。じゃあ勝手に選ぶぜ。
…嗚呼、お前ここに居ろ。うろちょろすんな」
「何でだ」
「サイズ確かめるためだばかやろう。」
「ちょっと見に行くだけだ、すぐ戻ってくる」
「ふざけンな居ろここに。つかお前絶対帰ってこれねェだろ」
「……………馬鹿にすんな、やればできる」
「その間は何だその間は」



がしっと服の裾を掴んで拘束。
暇をもてあまして何かを見にいくなら、楓香に任せず自分で服を選べばいいものを。
そう言ってみれば、王子は若干困った顔をする。
そして、ぽそり。


「…城じゃ、既存のものを選ぶということをしたことがなかったからな。
選び方がイマイチよくわからねぇンだ」



なんて。
僅かに顔が引き吊る楓香である。
どこの世界の王子だコイツは。
いや、異世界の王子であるのだが。
服は全てオーダーメイドでデザインは任せてあったなどとほざく王子に、楓香は軽くめまいを覚える。
何というか、さすが王子だ。


「この際だから選んでみろよ、自分のセンスで」
「…………む、」


ちょっぴり自信なさ気に。
だけどどこか楽しそうに。
服選びに集中し始めた王子に楓香はそっと息をつく。





そのまま大人しくしててくれよ。



(生活雑貨やら食料品やら)
(この先の買い物が)

(無事に済むことを願って)




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