王子≠じゃぱにーず王子


ピンポーン

「こんちにはー、蕎麦屋でーす」
「はーい」


インターホンの音。
隣でびくっと肩を揺らした王子は華麗に無視して、楓香は玄関へと向かう。
結局あのあと考え込んで、ポストに入っていたチラシの中から適当に日本食を頼むことにした。
蕎麦くらいなら食えるだろう、なんて思い付いた楓香は何のためらいもなく受話器を手にとって蕎麦を注文。
まさか蕎麦を食ったことのないじゃぱにーず王子なぞいるまい。
そう思ってのチョイスだったのだが。


「…何だコレは」
「蕎麦だよ、一回くらい食ったことあンだろ」
「無い」


まさかの展開である。
代金引換で会計している最中の発言、さすがにデリバリーしてきたお兄さんも何秒か固まっていた。

「…ちょっと待てじゃあお前今までナニ食って生きてきたんだよ?」
「主に肉や麺や汁物だな。詳しくは料理人にでも聞かねばならぬが…、そばというものは初めて聞く」


チョイスをミスった。
楓香は瞬時に思った。
コイツはナニ人だと、恐らく楓香だけでなくデリバリーのお兄さんも思っていることだろう。
ちなみに王子は今楓香のウィンドブレーカーとTシャツを着用しているので、髪と目の色以外の外見はあまり変な目で見られない仕様になっている。
だからこそ余計に"何を言ってるんだこの男"状態で固まるお兄さんであるのだが、まぁそれはおいといてだ。


「……すいません気にしないで下さい、とりあえずその蕎麦もらってもいいですか?」
「え、…あぁすみません、そうですよね!」

何事もないかのように会計をすませて蕎麦を受けとる楓香。
帰り際、デリバリーお兄さんはそういえばといったふうに口を開く。


「すみません、お隣の遠藤さんってお出掛けになったりしていますか?」
「…遠藤さんですか?…さぁ、ちょっとわからないです」
「そうですか、有難う御座います。……それじゃあまた後で回収に来ますので!」
「ご苦労様です」


おか持ちを携えたお兄さんが颯爽とアパートの階段を下りていく。
重そうにしているあたりまだ中に蕎麦が入っているのだろう。
きっと遠藤さんも蕎麦を頼んだんだ。
だからお兄さん遠藤さんのこと聞いてきたんだな、なんてひとり納得する。
玄関のドアを閉めて、くるり方向転換。


「オイ王子、お前まさかハシ使えないとか言うんじゃねぇだろうな」
「むしろハシとは何だ」
「よォしわかったフォークで食えフォークならわかンだろ」
「フォークは知っている」


早くも王子≠じゃぱにーず王子の方程式が成り立った楓香の脳内である。



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