違和感(1/1)
そのことに、
気付いたのは友達との会話だ。
違和感を感じたのはあたしだけ。
右から左に、左から右に、流れ行く音は止めどなく。
何故だろう、と、疑問が生じることなく進んでいく会話にあたしは何か言い知れぬ不安を感じた。
不安?
何故不安を感じているの、
何に違和感を感じているの、?
自分が常識人だなんて思ったことはない。
けれども、だけど、
目の前で交わされる会話の内容は何処か奇妙。



「昨日部屋片してる途中に絵本出てきてさぁ」
「よくもまぁあんな馬鹿馬鹿しい話にハマったよねー」
「桃太郎大人気だしねー」
「お供引き連れすぎて逆に鬼が可哀想だし」
「そんなこといったら人魚姫なんかさ」
「お妃の立場ないよね」
「かぐや姫とか月に帰りたがらないし」
「赤ずきんお使いに行かないし」

「「ウケるわー」」


紡がれる物語は何処か可笑しく、登場人物が物語を止めている。
それでもきゃははと会話を続ける友人たち。

何故この人たちは会話を続けられるのだろう。
何故この人たちは可笑しいと思わないのだろう。
何故、

そんなに笑っていられるのだろう。



それは恐怖だ。
言い知れぬ恐怖。
自分だけが異色の世界。
自分だけが違う。
どうしたのと、口を閉ざしていたあたしに気付いて声をかけてくる友人の一人。
試しに物語を、絵本の内容を確認してみるとやっぱり。


「桃太郎のお供は3匹ィ?」
「何ソレ激弱!」
「その桃太郎馬鹿じゃないの?」
「負け戦でもする気かね」
「もー、あんた今日センス高過ぎ」
「何の物語と混同してるんだか」



え、
と漏れる音はけらけら笑う音に掻き消される。
一体この人たちの身に何が起きている?
或いは他の人、世界に何かが起きているのだろうか。
否、ただふざけてるだけ?

それとも、
おかしいのは、 あたし?


様子がおかしいあたしに気付いてか友人数人が大丈夫?などと声をかけてくれる。
しかしながらそんな声に笑顔を返せる気分じゃなくて。

ごめん、気分が悪いから。

それらしく嘘をついて、尚も心配してくれる友達に軽く手を振ってあたしはその場を後にした。



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