異変(1/4)
ふらっと立ち寄った先は大学構内図書館塔。
ふらっとといっても若干迷ったりしたわけだがまぁそれはおいといて。
まだ授業が始まる前の時期。
みんな早々に帰るせいもあって図書館塔はもぬけの殻。
静寂な室内は見渡す限り本しかなくて。
お堅い論文や辞書辞典だったりなんだり授業や資格取得に必要な本ばかりが並ぶそんな場所、大学の図書館に絵本があるとは思えないけど、それでもちょっと気になってどうしようもないものだから。
児童図書、なる割り当てスペースを見付けて早速桃太郎の絵本を探してみる。



「…あった」

意外とあっさり見付かったその本。
手を伸ばして抜き取るそれの、異変は表紙で見てとれた。
中央に描かれた桃太郎、
後方で金棒を振り回す鬼。
あたし、一ノ瀬麻子の知る物語と違うのは


桃太郎の周りの大量の動物。



それは沢山、というよりかはわんさかというか、わらわらというか、とにかく描けるだけ描いてみた感が溢れる表紙。
何だこれは。
率直にそう思った。
脇に控えるはずの犬猿雉の代わりにありったけの動物が描かれている。
も一度言おう。
何だこれは。
まさかとは思うが図書館までがおかしくなっているとでもいうのか。
だとしたらどれだけ手の込んだ悪戯だろう。
念のために他の絵本も引き抜いて内容を確かめてみることにした。
数冊を手に取りパラパラめくって。
そしてあることに気付く。



「…あれ、?」

ぱたん。
本を元の場所に戻してくるり、体を反転させて、
麻子は図書館塔をあとにした。




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