狂った物語(5/6)

ずんずんずんずんとすすむ赤ずきん。
そんな赤ずきんをほうっておけないおおかみがうしろにつづきます。
どれくらいあるいたのでしょう。
赤ずきんはいつしか、おおきながけにたどり着きました。
おおきながけのまえで、赤ずきんは首をかしげます。


「おかしいわ、おばあちゃんのいえってこんなにこわいところにあったかしら。」

「いやだからまちがえてるんだって。」

「この下にあるのかしら?でもこんなところおりていけないわ。」

「なぁ、きいてる?」


すっとぼけた赤ずきんの声にはんのうするおおかみ。
しかしながら、その声は赤ずきんにとどいていないようです。
すっかりこまってしまった赤ずきん。
どれくらいがけをのぞきこんでいたのでしょうか。
すくなくともうしろで赤ずきんがおちないようにとそのずきんをつかんでいるおおかみがつかれてきたころ、
赤ずきんはそうだわ、と何かがひらめきました。


「おみまいのワインとケーキだけをとどければいいのよ!」

「まて、何でそうなった。」


おおかみのつっこみがかなしくひびきます。

「おばあちゃん!おみまいのワインとケーキよ!」

「あ、ちょっとまてバカ!」



おおかみのとめるこえもきかず、赤ずきんはがけのしたにむかっておもいきりさけぶと――


「えいっ!」


「ちょ、ばかずきんまてって!」


なんということでしょう。
そのままワインとケーキをがけのしたへとなげこんだのです。
これでもんだいなしとばかりにわらう赤ずきんと、がっくりとうなだれるおおかみ。
しばらくするとワインがじめんにたたきつけられたおとがきこえましたが、もうどうしようもありません。


「あああ…もったいねえ…」

「これでおつかいはおしまいね!」


相変わらずがっくりとしているおおかみとは逆に、赤ずきんはにこにこわらっています。
おかあさんにいわれたとおりのことができたとよろこぶ赤ずきんをみながら、おおかみはおもいました。

どうして赤ずきんのおかあさんは赤ずきんにおつかいにいかせたのかと。
そしてじぶんは、どうして赤ずきんをみつけてしまったのかと。


「…にんげんッてわかんねぇ…ろくなことがありゃしない。
ひがいをこうむるよりはかかわらないほうがいいかな…」


すっかりつかれきったおおかみはポツリとそうつぶやき、もりのおくへとふらりときえていきました。


「あら、おおかみさんはどうしたのかしら?」


赤ずきんにおおかみのつぶやきはきこえなかったようでした。
が、頭がゆるい赤ずきん。
すぐさまそんなことはわすれ、おうちにかえろうといまきたみちをひきかえしはじめます。

おばあちゃんのいえにおつかいできなかったとおかあさんにしかられた赤ずきんでしたが、赤ずきんがおつかいにいってから森におおかみがでなくなりました。
そして赤ずきんは、おおかみをたいじしたのだとかんちがいしたひとたちから、とてもほめられるようになりました。


めでたし、めでたし。






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