狂った物語(4/6)

むかしむかし、とある森の近くに赤ずきんとよばれるおんなのこがいました。
赤ずきんはいつも赤いずきんをかぶっているので、いつしかこうよばれるようになりました。
ほんとうのなまえはみんなしりません。


とある日、赤ずきんはおかあさんにお願いされました。


「赤ずきんちゃん、森のおくのおばあちゃんのおみまいにいってちょうだい。」

「わかったわ、おかあさん。」

「森にすむこわいおおかみには気をつけるのよ。おばあちゃんのおうちに、まっすぐいきなさいね。」

「はい、おかあさん。いってきます。」


赤ずきんはおかあさんにわたされたワインとケーキをもって、おばあちゃんのおうちにむかいました。
おばあちゃんは森のおくにひとりですんでいるかわりものです。
今までびょうきをしたことがありませんでした。
しかし、すうじつまえからたちのわるいびょうきにかかっていると、赤ずきんのいえにしらせがきました。
赤ずきんはおばあちゃんにあうのはとてもひさしぶりなので、おおかみのことをなしにしてもちゃんとおうちにいけるかしんぱいでした。


「おばあちゃん、だいじょうぶかしら。」


ぽそりとひとりごとをつぶやいた赤ずきん。
その赤ずきんを、そっとうしろからみつめるかげがありました。
このもりにすむおおかみです。


「あれは赤ずきんじゃないか。こんなところでひとりだなんてめずらしい。
…よし、せっかくだ。あいつをくってやろう。」


この森にすむおおかみは、ひとをたべるとゆうめいでした。
おかあさんが気をつけるようにいったのはこのおおかみのことです。


「うーん、どっちだったかしら。こっち?」

赤ずきんはおおかみにねらわれているともしらず、おばあちゃんのおうちにむかおうとかんがえています。
わかれみちのまえ、赤ずきんはしんけんになやんでいました。
かたほうはおばあちゃんのおうちにつづくみち、もうかたほうはおはなばたけへとつづくみち。
どちらへすすめばいいのかがわからなかったのです。
ですが、たとえおはなばたけへとつづくみちをえらんだからといってもまようことはありません。
なぜなら、おはなばたけはおばあちゃんのおうちのうらにあるからです。
しかし。
この赤ずきんは、実はこまった子なのです。
とつぜん、ひらめいたように声をあげます。


「そうだわ、おかあさんはまっすぐ行きなさいっていっていたわ。だからまっすぐ行けばいいのよね?」
「いやいやそんなことねえから!」


うしろをあるいていたおおかみが思わずつっこみをいれましたが、赤ずきんには聞こえません。
おかあさんのいいつけどおり、まっすぐにみちなきみちをいく赤ずきん。
そう、赤ずきんはちょっと頭がゆるいおんなのこだったのです。
ずんずんとすすむ赤ずきん。
見かねたおおかみが、そのずきんをうしろからつかみます。
人気がないところにいるのですからそのままたべてしまえばいいものを、このおおかみはきづいていないようでした。
あんがいおひとよしでせわずきなのかもしれません。


「おい、赤ずきん。」

「あらおおかみさん。こんにちは。なにかご用?」


赤ずきんはおかあさんにおおかみにきをつけなさいといわれたこともわすれてにっこりとわらいかけます。
頭がゆるい赤ずきんは、ひとつのことをおぼえるのにせいいっぱいなのです。
そんな赤ずきんにあきれながら、おおかみはことばをつづけます。


「おまえ、おばあさんちにいくんだろ?」

赤ずきんはこたえます。


「そうよ。まっすぐにいきなさいっていわれたから、まっすぐにすすんでいるの。」

「アホかおまえ。」


あらためて赤ずきんのすなおさにあきれるおおかみ。
どうしてこの赤ずきんをおかあさんはひとりでおつかいにいかせたのかとしんけんにかんがえます。
そんなおおかみをよそに、バカにされたとおもった赤ずきんはずんずんと先にすすみます。

「おおかみさんったらひどいわ!」


いいえ、きっとひどいのは赤ずきんのあたまのなかです。
そうおしえてあげるひとはざんねんながらどこにもいません。







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