地下(2/2)
ドアを開けたのは茶髪の、優しそうな目をしたピアスの男の人。


「あ、」
「あ!君さっきの」


目が会って思わず声を漏らした麻子に気付いた茶髪の人が僅かに表情を綻ばせる。
その顔に見覚えがあるのは、麻子の心の片隅に小さい罪悪感があったりするからなのだが、そこにいたのは麻子が晴輝と千歳との逃走劇の果てに激突してしまった茶髪のお兄さんだったりする。


「さっきは大丈夫だった?ごめんねー俺吹っ飛ばしちゃってさぁ。
ここに居るってことはやっぱあの後そこの怖いお兄さんに捕まっちゃったんだね、可哀想に」
「おいこらバンビ」
「あははは、何も言ってませんよ先輩」


大丈夫です、と麻子が発するより早く嫌味と取った晴輝の口が開かれる。
仲良さげに晴輝と会話を交わすこの茶髪の彼。
首をひねる麻子に補足説明をくれた千歳によるところ、この彼が、店長いわくの薫であるらしい。
彼が誘導屋、オペレーター。
麻子たちを導いてくれる道しるべとなる人物である。
さっきは急いでいたせいもあってよくは見なかったものの見た感じは麻子と同年齢、或いはいっこ上くらい。
麻子の先輩にあたる晴輝を先輩と呼んでいるところを見ると、年齢的には晴輝よりも麻子に近そうだ。


「……薫君、」
「千影さんなら今あっちと繋げる準備してます。俺は新入りちゃんに道具の説明と仕事の大まかな内容の説明任されました」
「そうですか、ではお任せしますよ」
「お任されまーす」


では、と、
話の流れで麻子の肩に手を置く店長。


「一応研修ということで、今回は晴輝君、千歳君、薫君の三人のお仕事の様子を見ていて下さい。
百聞は一見にしかず、眼で視てお仕事を覚えるように」


宿題です。
そう付け加えて店長は眼鏡をきらめかせて地上へと帰っていった。




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