確かめる、(3/4)


…………。
翌日、だ。
次の日である。
大学入門なる意味不明講義に参加し終えて素早く向かった先の図書館。
昨日と同じくまっすぐ児童図書コーナーへ足を進めて。
昨日と違って2人ばかり人間を見かけた児童図書コーナー。
絵本を手にとって読んでるふうなその2人のとなりをすり抜けて、絵本棚の前を陣取りあたしはすぐさま絵本を手にとって。
……そして固まった。
希望と期待を胸に今日を乗りきったハズだった麻子なののだが、見事に撃沈。
狂った物語は1日経った今も尚ご健在である。
嗚呼そうか。
やっぱり麻子は記憶を塗り替えるべきなのかと、諦めかけて諦めきれなくて。
とりあえず最後の望みをかけて昨日回った本屋を3件とも回ってみようかと思った。
ここがだめだったらでもあっちもだめかな、なんて思っても無視だ。
憶測だけで物を言っちゃいけない。
確かめてからがっかりするべきだ。
とりあえず何冊かパラパラめくって内容を確かめてみる。


「…あれ、?」


するとどうだろう。
ひとつだけ。
ひとつの物語だけだが、内容が元に戻っているものを見付けた。
それは彼の有名な『人魚姫』。
元気いっぱい跳ね回って人間になることを拒み、人魚のまま王子に猛烈アタックをかましていた姫が。
泡になって消えていた。
儚く美しく、
自らの声と引き換えに脚を手に入れ、真実を伝えることも出来ずに王子の命と引き換えに泡になった姫に。
理由はわからないが戻っている。
慌てて他の絵本を開いてみてもその他は何ら変化なし、
眠り姫などもとから変わっていなかったものは歪みなく、しかしながら軍隊を引き連れた桃太郎が相変わらずお供選抜選挙なんてことをやっているあたり歪んだ物語は歪んだまま。
ちょっと気になってさっきすり抜けた2人を見やる。
その手にはそれぞれかぐや姫と赤ずきん。
どちらも狂った物語である。
知り合いであるらしいその2人は絵本を手にとって何やら話しているらしいのだが、驚いたりしていないところをみると残念ながら絵本の変化には気付いていない様子。

………、
……………。
…うん、確かめにいこう。
絵本を本棚に戻して、くるりと方向転換。
ちょっと、試しに感想を聞いてみようかと思ったのだけど。
さすがに知らない人だし先輩っぽいし、何より頭がオカシイ人に見られちゃったら嫌なのでそこは断念。
麻子は急いで、なるべく静かに図書館棟をあとにした。




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