雑談タイムであります。(3/4)
他愛の無い会話に勤しんで一時間くらい。
少しずつ上城晴輝という人の人柄が見えてきた気がする。
取り敢えずわかったのは彼が自分と同じ大学の先輩だということ、自分を飾らない人だということ、感情豊かで何処か少年の心を持っているということ、そして思ったよりもいいひとだということ。


「お前それ勿体無ェよ麻子!」
「いやだって仕方ないじゃない、あたしだって読みたかったよ、!」
「あーくそッ、そこに俺が居たら店員に詰め寄って何が何でも買おうとすんのによ」
「それ店員さん可哀想」
「知るか、俺が買いたいときにその本が店頭にないのが悪い」
「…なんという、」


餓鬼っぷり。
…と、そこの所はごっくんしてなかったことにしよう。
彼だって悪気がある訳じゃない。
素でそう思ってしまうだけだ。
だからこそタチが悪い訳ではあるのだけれど。
ちらりと時計を見れば時刻は3時半を回る頃。


「…くそっ、店長の奴遅ェな…。居なくなってほしいときにはいるくせに」
「貴方はもちょっと店長を敬った方がいいと思う」
「聞こえねェな」

トントントンと人差し指と机とが叩き出すリズム。
さぁてこれじゃあ帰るのは何時になるのかなと、考えてふと目の前の晴輝を見やる。

「…そういえばバイトって何時まで?シフトはどんな感じ?」


ふと思い立って聞いてみたならば、入り口を見張っていた晴輝の目がこちらに向く。


「シフト…、ねぇ。なんかもうアレだな、狂った物語があったらバイトみたいな感じだな」
「…狂った物語があったら?」
「おぅ。」


それってどんなバイトなんだろう。
当然のことながら、説明を受けていない麻子はバイトをさせられる方向で話が進んでいるわりにバイトの内容も何も知らない。
ここがどんな場所なのか、何をする所なのか、彼らは何者なのか。
バイトは恐らくここに連れてこられた経緯や彼のさっきの発言からも、狂った物語に関係するものだとは思うけど、
詳しくはわからない。
晴輝に聞いてみても説明が面倒だから店長とか千歳に聞けの一点張り。
…どうしてくれようこの男。
人を勝手にバイトさせるならそれ相応に説明責任とかもあってよさそうなものだが。
俺に聞くくらいなら諦めろとかほざいているあたり説明する気は皆無のようだ。
ならば仕方ないから、店長さんや千歳さんとやらに聞いてみるしかないかと諦める。



ところで。


「ねぇ晴輝君、店長さんは店長ってわかるけど、…千歳さんって誰?」

きょとりと丸まった目にその場の空気が暫し固まる。
麻子の問いかけに数回ぱちくり瞬きを繰り返した晴輝は、その後完全に忘れてたと言わんばかりに。




「…あれ、俺千歳の紹介してねェっけか?」


なんてのたまった。




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