自己紹介タイムであります。(2/4)


「名前は?」
「一ノ瀬麻子」
「年齢は」
「…18」
「身長」
「154…」
「小ッさ!趣味は?」
「日向ぼっこ」
「婆臭ッ!」
「失礼な、じゃあ読書でいいですよ読書で」
「悪ィ悪ィ、読書な。いい趣味してんじゃん、ここで働くにゃ十分だぜ」
「…はぁ」
「因みに、お前童話とかは好きか?」
「まぁ。昔はよく読んでましたけど」
「ふーん、…おっけ合格。次俺な」


これははたして自己紹介と呼べるのだろうか。
自己を紹介してない気がするが、まぁいいか。
くるくると手に持ったシャーペンを回して目の前の彼は何処か試験官ふう。
ぱたりとシャーペンを机に置くと、何故か彼の瞳が光った。

…嗚呼、なんか子供みたい。



「俺の名前は上城晴輝、年齢は20。趣味は自分のやりたいことをやることで不自由が嫌いだ。得意なことは自分の道を突っ走ることで、好きな言葉は猪突猛進。何か他に聞きたいことは?」

突如質問を投げられて一瞬呆気に取られる麻子。
ちょっとばかし簡潔過ぎやしないだろうか。
しかしながら、彼の性格はよくわかった気がする。
聞きたいことはまぁ、山ほどあるわけで。


「ありすぎて何から聞けばいいのやら」

ぼそり、
呟く声に彼はふぅんと小さく相づちを打つ。


「…じゃあまぁ、取り敢えずお前が聞きたそうなことを俺から説明するな」


そう言ってぴこん、
人差し指が天を向く。


「まずお前に声をかけた理由。
表情とか行動とかでお前が絵本の変化に気付いてることに気付いたからだな。…あの大学で絵本探す奴なんて滅多にいないし。
お前をここに連れてきたのは、お前をここでバイトさせるため。以上。他に何か聞きたいことは?」

………。
ちょっと待て。
なんか今、麻子は聞き捨てならないことを聞いた気がする。
あたしをここでバイトさせるため?
なにゆえ。


「あたしをここでバイトさせるッてどういう…?あたしまだバイトする気は…」
「お前に拒否権はねェ。」
「えぇぇ」


質問を促したくせに突っぱねやがりましたこの男。
拒否権はねェ発言からは理由を聞いても彼は全然教えてくれない上に、他の質問はないのかと逆に聞き返してくる始末。
…なんだか麻子はトンでもない店に来てしまったようだった。
今は他に聞きたいことも特には浮かんでこないので、軽く左右に首を振って。

「…ンだ、無ェのか。…まぁいいや、ンじゃ麻子。俺のことは晴輝でいい、敬語もいらねェ。取り敢えずここでバイトすることになるお前を存分にパシるつもりだから、そこンとこよろしくな」


にんまり手を差し出す彼。
なんだか、とってもよろしくしたくない気分になる文章だ。
もうちょっとセリフというものを考えられないんだろうか。
それでも悪気はないみたい。
思ったよりも社交的な彼、否、晴輝君とやらが差し出したままの手。
にっこり浮かんだ笑顔の後ろで早く取れよ的なオーラがゆらゆら揺れている。
仕方なし、拒むのは申し訳ないと思ってその手を取った麻子。
よろしくという言葉に対して渋々こちらこそ、と手を握ると至極嬉しそうな満面の笑みが返ってきた。




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