カミサマを救う会(4/4)
「………………以上。」
ぱさりと紙の束を机に放り投げて、エティは疲れ気味に腰をかける。
隣で報告を聞いていたテオドールは感心したようにエティを見つめ、アーノルドは呆れながらも口を開いた。
「…エティ、一体今の報告のどこがハーティの報告と被ってたんだ…?」
「神降ろしの事例が過去三件の辺りですかね」
「つまり冒頭の一行だけだな」
「うわぁすっごいノール先輩、何で行数わかったンです?」
「…聞いてればわかる」
「あらぁ。」
エティの簡潔な一言に盛大にため息をついて、アーノルドは仕方なしに口を開く。
「………次、キーツ」
「なになに?オレん家の晩御飯の話をしろって?」
「言ってない」
くいくいと人差し指で立つように促して、アーノルドは無理やりキーツに報告をさせる。
チームの中では物事を円滑に進めるために必要不可欠な、頼れる苦労人お兄さんアーノルドである。
そんな彼の苦労を気にも止めず、好奇心旺盛ハーティがこっそり暴走を始める。
「エティ、さっきの話だけど」
「…すまんですがハーティ先輩、資料渡すので適当に読んで下さい。
エティはさっきので疲れちまいましたので」
ぐってーんと机に突っ伏して資料の束を差し出すエティ。
対するハーティは違う違うと首を振る。
「神降ろしのことじゃなくて、テオドール君のことよ。同じ学年なんでしょ?」
「…………その話まだ続いてたンですか」
ぐてっと突っ伏したまま受け答えを続けるエティはそのままの体勢で首だけを逆向きに反転させる。
反対側に座るのは同学年のテオドールだ。
「……僕に何か?」
「………いや、エティじゃなくてハーティ先輩が何か聞きたいことがあるらし」
「エティ、もういいからこっち向きなさい」
エティの視線に気付いたテオドールが首を傾げるや否や、包み隠さず事を述べる彼女に、ユリウスの手が伸びる。
ハーティに頼まれた彼によって首の向きを戻されるエティ。
「(…何で本人に聞くのよ…ッ)」
「(だってすぐそこにいるんだから直接聞いた方が早いし正確じゃねーですか)」
「(……アンタねぇ、何のためにエティに聞いたと思ってんのよ)」
「(…………………さぁ?)」
素で首を傾げるエティに、ハーティの拳骨が落ちる。
「いったーッ!!」
「エティ!アンタもうちょっとモノ考えてから行動なさい!!」
「ノールせんぱぁぁああぁぁあい!!何か知らないけどハーティ先輩がエティを殴りやがりましたぁぁあッ!!」
「ちょッ!違うわよアーノルド!ちゃんと理由があるのよ!?」
「…………ハーティ、すぐ手を出さない、エティは殴りやがったとか言わない。二人とも女の子だろう。
…あとキーツ含め四人はちょっと黙って」
「俺も!?俺喋ってねぇぞ!」
「オレ今報告中で会話に参加してなかったじゃん!」
「エティ殴られただけ!」
「わ、私が全面的に悪いみたいじゃない!?」
ぎゃいぎゃいと口論が始まる四人にアーノルドの口からさらにため息がもれる。
彼なりにこうならないよう頑張っていたつもりだったのだが、力及ばずだったらしい。
「…………ごめんな、テオ、フェイも。何だかんだで毎回こんな感じだ」
「…いや、」
「…楽しくていいんじゃないですか?僕は嫌いじゃないですけど」
微笑ましげに四人の口論を見つめるテオドールに、アーノルドとフェイの二人は一瞬思考停止する。
言ってはなんだが、ハッキリ言って一番鬱陶しそうにしそうなテオドールだ。
予想外すぎる、…というのは、ただの偏見だろうか。
さすが人間関係を壊したくないが故に飛び級制度を断り続けていると有名な彼だ。
そんなテオドールの様子に、隣のフェイもくすりと微笑む。
「…テオ君のいう通りオレも嫌いじゃないよ、この雰囲気。
何て言うか…、ギスギスしてないよね。学年のくくりがないっていうか…」
「…単にアイツらに常識が無iげふん、まぁ俺も嫌いじゃないんけどさ。
…報告のときくらいは静かにしてほしいというか」
そういって遠くを見るように口論を続ける四人に視線を移すアーノルド。
その視線の先ではハーティ(キーツ)vsユリウスエティの戦いが勃発していたりする。
「エティ!ユリウスの陰に隠れてないで出てきなさい!」
「嫌だッてンですよ!出たら先輩絶対何か投げてくるんだもの!」
「ユリウスに当たってもいいの!?」
「ユーリ先輩に当たるのはダメなのにエティに当たるのはいいのですか!?」
「あーもう面倒臭いッ!キーツちょっと筆箱貸しなさい!」
「何でオレの!?自分の投げろよ!」
「つか俺に当てる気か!?」
「嫌ならエティを前に出せばいいわ!」
「出来るかこの暴力女!女の子だぞ!」
「ならば盾になりなさい!」
「うぉッ!?あ、危なッ!マジで投げてきやがったコイツ!!」
「オレの筆箱ッ!!ちょ、携帯はダメーッ!!」
そんな四人の様子を、
残りの三人はただただ見守るだけ。
「うん、すまんな。結局こうなる。
……まぁ気にしない方向で頼むよ。フェイ、調べてきたこと報告してもらってもいいか?」
「…この状況で?」
「ああ。その次テオ頼むな」
「…この状況で、ですか。」
「この状況で、だ」
そんなこんなで、神を救う会は進んでいく。
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