悪戯的視察(2/3)
「……つまり、神降ろしに重要かつ必要不可欠なのは人柱です。十二人の神を降ろす訳ですから、少なく見積もっても十二人」
「なるほどな、それで、神を降ろした人間は動けなくなるってことか」
「正確には、予め動けなくした状態で神を降ろし、拘束するって感じだね。
神は人間の身体に降りたら使える力が極端に減少するらしいから、拘束を自力で解くことはまず不可能みたいだよ」
「ふむ…、神が降りた体の主はどうするんだ?魂とか、」
「具体的な記述はありませんでした。
ですが、神は人間のように"器"を持っている訳でなく思念体のようなものである、という説が有力なので…」
「魂だけで天界に上がって、神の席に座ってしまおう…ッて算段か」
「恐らくは」
ぎしりと重心が傾き椅子が僅かに音をたてる。
神降ろしの原理は大体わかってきた。
わからないことも多いが、自力で調べたにしては中々の情報量だとも思う。
整理した内容を手元の紙に書き記して、アーノルドは再び口論を続ける四人へと視線を戻す。
「ホラ四人、そろそろ止めろよ。いい加減決着ついたr」
途端、固まるアーノルド。
現状は何故か、ハーティvsユリウスとそれを止めようとしているキーツエティの構図へと移り変わっていた。
オロオロしていたエティがアーノルドの視線に気付いてここぞとばかりに駆け寄ってくる。
「先輩先輩助けて先輩っ、何だか大変なことにっ」
「………一体何をしたんだ」
頭を抱えるアーノルドに、エティは簡潔に説明をする。
「ユーリ先輩がハーティ先輩を煽ってっ」
「…またか」
そんな説明でわかってしまうのは、この口論が日常茶飯事であるから故なのだが。
アーノルドが現状に加わっていることに気付いたらしいユリウスが、ぐるりと首を反転させる。
「アーノルド!ハーティッて何でこんなに暴力的なんだ!?何をどうしたらこんな女が出来るんだ!?」
「いい加減黙りなさいよアンタ!!もう一発殴られたいワケ!?」
「ンでそこで殴るッつー選択肢が出てくるんだよ!?服を掴むなハーティ!!」
口論に巻き込まれたことを悟ったアーノルドはもう一度、盛大にため息をつく。
隣で心配そうに自分の制服の裾を掴んでいるエティの頭を軽く撫でて、
「…………エティ、」
「な、なにですか?」
「拘束術かけてやってくれ、音の遮断」
するとハッとなるエティ。
こくんと頷きと小さく返答した後、彼女は言われた通り、大きく短柏手(しぬびで)を打つ。
「"音遮、万音等しく除する幕"」
エティを中心に円形の輪が広がって、
途端、一切の音が消えた。
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