301号室の今田さん。



コーン…
『小学生の作った落とし穴に落ちろ』

コーン…
『魚の骨が5本くらい刺され』

コーン…
『作ったばかりのココアぶちまけろ』

コーン…
『車に轢かれそうになってビビれ』

『…………あとは何がいいかなぁ』
『………嗚呼ヤバい思い付かない』

コーン…
『とりあえず何か嫌な目にあえ』



……………。
今田さんの部屋から何か呪詛じみた声が聞こえてきた。
以前聞いた話によると、これは呪いの儀式なんだとか。
これは、今田さんの身に何か嫌なことがあった場合に遂行される儀式なのである。
コーン、と響くあの音は、釘を打ち付ける音らしい。


「浴衣着るのが最近楽になってきました」
「ろうそくの消費量が半端ないんです」
「布製の人形って燃えるごみですか?」


なんて、たまに話すと言われたりする。
僕も見たことないがそれから推測するに、きっと今田さんは儀式中に蝋燭を立てたり白い着物を着たり数珠とか持って布製の人形に釘をカンカンしてたりするんだろう。
それのどこが黒魔術なんだかよくわからないけど。
むしろ和要素びんびんだけど。
とりあえずワラ製の人形じゃなくてよかったなんて思いつつ。

…でもまぁとばっちりを喰らってはたまらないので。
と、いうか儀式の最中にインターホンを押そうものなら、呪いの矛先が僕に向いてしまいかねない気がするので。
この部屋は一旦スルー。

全部回ったあとに儀式が終わったようだったらまた来よう。



次、行きます。




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