アパート一階喫茶店。 「ホラ、蓮見さんの分」 「さんきゅ。」 店のドアを開けると、すかさず待っていた母親に封筒を手渡された。 今はまだ営業中。 ちょうど帰ろうとしているサラリーマンを見送れば、客足がいささか落ち着く時間帯だ。 ……佐倉さんはこれからお昼を食べにくるのかと。 チラリと見た先の時計は午後2時を過ぎた頃。 「後で佐倉さんがお昼食べにくるって」 「おやそうかい。今日は来ないなと思ってたけど…、忙しかったかね」 「多分ね」 ことんと置かれた水に口をつけて。 「浩太郎君からは回収できなかったんだろう」 「母さん聞いてただろ、また二階堂君と追いかけっこしてったよ」 「で、」 「今田さんは儀式中」 「遠藤さんさっき帰ってきたみたいだったよ?」 「ホント?じゃあ寄ってこようかな」 カタン、と。 僕が立ち上がったと同時に店の入り口から佐倉さんが現れた。 後ろには王子君の姿も。 「楓香ちゃん遅かったじゃない、王子君も」 「ちょっと色々やっててな」 「お邪魔する。」 ガタカタンと二人が席につく。 母親が二人にメニュー表を持っていくと、そういえばと佐倉さんが僕の方を見た。 「賢吾さんこれから徴収二周目か?」 「え、あぁそうですけど…」 「だったら遠藤さんのトコ早く行った方がいいと思うよ。なんかノブに"家賃"って書いた袋かかってたから」 「………盗られちゃうじゃん!?」 「だから早く行けッて」 「ホラ行ってこい賢吾」 慌てて立ち上がった僕の様子を面白がってか、後ろからくすくす声が聞こえてくるが。 こんなことで一々文句を言っていたら母親に怒られそうなので。 僕はなるべく早足で遠藤さんの部屋へと向かった。 ← | → |