403号室の蓮見さん。



インターホンを押しても返事がなかったので、蓮見さんは外出中かと踵を返した先。
僕の部屋の前でばったり蓮見さんに出くわした。



「Oh,I looked for you!
I was in the lower coffee shop until I a while ago.
Where were you so far?」


そして出会い頭これである。
ちくしょう。
僕は英語読めるけど聞き取れないんだってば。
Whereだとかlooked forだとかしか聞き取れなくて、とりあえず僕を探していたことだけは理解したのだけど。
聞き取れもしなければしゃべれもしない僕が困惑していたならば、蓮見さんはたまらなくなってぷくくとふきだす。


「………蓮見さん」
「いやぁごめんごめん、賢吾君本当純粋に困ってくれるから楽しいんだよね」
「どういう意味ですか」
「ホラ、例えば佐倉ちゃんなんかに今みたいに話しかけたら"ハァ?"って顔されちゃうじゃん?」


確かに、なんてちょっと納得してみたりして。
というかそもそもそうじゃない。


「蓮見さん英語喋れないんだから無理して英語使わなくていいですよ」
「いやホラだから、賢吾君が困る顔が見たいんだってば」
「タチが悪いです」
「よく言われる」


くすくす。
笑う蓮見さんはお父さんが外国人、お母さんが日本人のハーフ美形人間だったりする。
ちょうどよくゆるり巻かれた癖ッ毛と、明るい茶色の瞳、毛色は染めているのか濃いブラウン系の色だけど、きっと金髪も似合うんだろう。
自分がしゃべれないのに英語で話しかけてくるという暴挙に至る蓮見さんは、和名の他にもリチャードという名を持っている。
リチャード、と言われるとちょっと納得しかねるものの、亮介という名前よりはリチャードの方が似合ってる気がする。
僕によく構ってくれる彼だが、遠い地にいる弟さんを僕に重ねているんだとか前に話してくれたことがある。
蓮見さんの弟さんと僕に被るものがあるのなら、是非とも教えてほしいものなのだが。


「智也さんは元気そうですか?」
「この前電話したら元気そうだった。
………ただちょっとねぇ。昔からそうだったけどなんか危ない道に走ってそうなんだよね、アイツ」
「危ない道?」
「なんかこのままだと二次元にいっちゃいそうなんだ」
「…………………」



それはどこの片山さんだと内心でつっこんで。
まぁ、この世にそんな人間はたくさんいるだろうし、かくいう僕もどっぷり浸かっているので。
そこら辺はまぁ軽くスルー。


「まぁホラ、そのうち目が覚めますよ」
「だといいんだけどねぇ。…悠哉の方もなぁ…。
………あ、家賃は山田さんに渡しといたから」
「わざわざ有難う御座います」


因みにこのアパートにおける"山田さん"は母のこと。
なら蓮見さんはさっきまで喫茶店にいたのかと考えて、そういえばさっきin coffee shopって聞こえた気がするなぁなんて考えながら。
一回りしたので一度喫茶店に戻ります。




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