赤ずきん(7/8)


「具体的かつ簡潔に言うと、赤ずきんがなんか違うんだよ」



んン、?

と、狼が発した言葉を聞いた三人が同じような反応を示した。
そのうち一人は全体的な話の流れがわからずにすべてにおいてわからないことを主張しとりあえず首を傾げ、
一人は大筋を理解してはいるものの、前提として赤ずきんの様子が変ということを知らないが故にうまく理解出来ず訝しげな顔をし、
そして一人はすべてを理解したうえで、狼が発した言葉の内容をきちんと理解出来なかったようだった。


『ごめん狼全然具体的になってない気がするんだけど、もうちょっと具体的に言ってくれる?』
「いや待て待て、まず俺らに現状説明をしろ意味がわかンねぇ」
「むしろ現状説明より先にもっと基礎的な説明をお願いします」
『待ってちょっと待って、時間ないから説明する暇ないから、狼説明お願い二人はとりあえず無視して』
「「おい」」


機械越し、ぴったり重なったツッコミがオペレーターへと届いたハズなのだが、ガン無視よろしく返答はない。
危うく、ブレスレットを壊そうと手を伸ばしかけた晴輝を麻子が必死に止めて。
狼は説明し辛そうに腕を組む。


「うー…ん、なんつぅかな。
とりあえず晴輝と嬢ちゃんに説明すッと、最近ちょっと赤ずきんの様子が変だッて話を千歳を介して薫としてた訳だ。
ンでなんか違うッてのの具体説明だが…、会話してても何してても本ッ当なんか違うんだよな…」


そこで暫し、狼の口が閉じる。



「全ッ然具体的になってねぇぞ。
なんか違う…ッてなぁ。ッてことはアレか?地図の使い方がいつもと違うとか婆ちゃん家への道がいつもと違うとかそういうことか?」
「いや…、そういうんじゃねぇ。……赤ずきんッつぅ人間は今まで通り一緒だし、行動パターンもそんなに激しく変わった訳じゃねぇンだが…、」
『……"様々なことを忘れている"?』
「いや、あってるようであってないッてか…そんなただの記憶喪失じゃねぇンだよ。
なんつぅか、…嗚呼ちょっと性格も違うか…?赤ずきんの姿と記憶を持った別人、みたいな感じでさ」
「『……はぁ?』」


訝しげな声が2つ重なった。
もっと詳しく説明しろよ、的な視線を向けられて微妙に困った様子の狼に、助けを求められても助け船を出せない麻子は逆に晴輝に助けを求める。


「……ど、どういう…?」
「…俺もよくわかんねぇ。ちょっと待ってろ」


ぽんぽんっと頭を数回叩かれて、それ以上何も聞けなくなった麻子はこくりと頷いて口を閉じた。


『ごめん狼、誰一人として全くわかってないからもうちょっと具体的な説明にならないかな??』
「…………いや、だったら実際赤ずきんに会って話した方が早い」
『…嗚呼、確かに』


狼の提案に薫は小さく頷いて、何やら機械越し、会話する風な小声がもそもそ聞こえてくるのに耳をすませていたならば、


『…………わ、かりました、じゃあすみませんが晴輝先輩と麻子ちゃん、ちょっとイレギュラーがあったけどとりあえずお仕事をしましょうとのことなので、』
「普通に仕事、でいいんだな?」
『大丈夫です』


うしッと、確認をとって気合いを入れた晴輝は麻子に向き直って、人差し指を天に向ける。


「これからここに赤ずきんが来る。その前に仕事の軽い説明だけしとくぞ。
あとで元の世界に戻ったらちゃんとした説明はすッから躍起になって覚える必要はねぇからな?」
「うん、お願いします」


軽く頭を下げると少しばかり機嫌をよくする晴輝。
立てた人差し指でくるくる円を描きながら口を開く。








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