赤ずきん(3/8)




「ななッ、何っ!?」


びくんッ、と肩を跳ねさせて、どこに声の主がいるのかもわからない麻子はその場で何度か回転した。
ぷくく、なんて笑いをこらえたような声が聞こえて晴輝の方をにらんだならば、ものすごく頑張ってこらえているのかひたすらにやにやしている晴輝と目が合った。


「謎な行動起こしてンじゃねぇよ阿呆」


なんて言って、僅かに顔を横に向けた晴輝は自分の耳を指差して、声の音源を教えてくれた。


≪なぁに笑ってんですか先輩、女の子に失礼ですよ≫
「今のは完全にコイツが悪ィだろ、その場で回転する奴がいるか?」
「うるさいよっ、呼び出し音みたいなのがあるかなって思ってたんだから仕方ないじゃんッ」
≪そうですよ先輩、ちなみに麻子ちゃん、今のでわかったと思うけど、オレいつもこんな感じで話しかけるから受信機の回線は繋いだままでいてね。
切ってると力ずくで繋ぐから気を付けて≫
「わ、わかったっ」
「コイツ多分あと二、三回は回転すンぞ」
「しないよ!」



何だかさりげなく怖いことを言う薫と、失礼極まりない晴輝と。
とりあえず受けた注意に返事を返すと、よろしい、なんて言って受信機から薫の笑ったような声が聞こえてきた。
そして数秒の間の後、聞こえてきた薫の声音が僅かに真剣身を帯びる。



≪それじゃあ……早速始めるよ、麻子ちゃん。晴輝さんの仕事っぷりをちゃんと見といてね≫
「わかった、…千歳さんは?」
≪千歳先輩は今狼と接触中、気にしなくて大丈夫だ。
それより先輩、赤ずきんはあと10分くらいで来ますが、≫
「わかってる、双子だろ?千歳が探しとくッて言ってたぜ」
≪話が早くて助かります。麻子ちゃんには説明しました?≫
「いや、まだコイツ双子には会ってねぇから言われてもわかんねぇだろうと思って言ってねぇ」
≪………そう、ですね、妥当な判断だと思います。じゃあすみませんが先輩、通常通りのお仕事でお願いします、また赤ずきんが近付いたら連絡入れますんで≫
「おっしゃ、任せろっ」


ぷつんと回線が切れるや否や、手をぐるんぐるん回してお花畑の中を突き進み出す晴輝。
そしてその背を追いかけて進む麻子。



「(……結局、千歳さんが何をしているのかは保留なんだな、)」


前を行く晴輝は、もうそんなことなんて頭にないみたいだった。





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