ありがち
ふ、と思ってしまったらもう止まれなかった。
「はまだ、ラーメン食べたい。ラーメン」
読んでいた漫画の主人公が美味しそうに食べていたのがいけない。ラーメン。ああラーメン。考え始めたらどうしても我慢できなくなって、既に眠っていた浜田の身体を揺すった。バイトから帰ってきてすぐに寝た浜田は、うーん、と迷惑そうな声を出す。
「なにー…」
「ラーメン!食べに行きたい!」
「えー…」
不服なカオをしながらも、浜田はのそのそと起き上がった。立ち上がってジャージを羽織っている。あ、行ってくれるんだ。最近気づいたのだけど、浜田はなんだか私に甘い。私に、だけではないのかもしれないけど。
浜田が連れてきてくれたラーメン屋さんは、カウンター席しかない、こじんまりとした店だった。小さなテレビからは、うるさくない音量で深夜のバラエティが流れている。
私が味噌ラーメンにチャーシュー増量、トッピングにバターを追加すると、浜田は引いた。
「こんな時間によくそんなの食うよな…。女の子だよね…?」
「うるさい」
だって食べたいんだもんしょうがない。浜田はシンプルな醤油ラーメンを注文した。ラーメンができあがるのを待っている間、私たちは何を話すでもなくぼんやりとしていた。浜田と親しくなってからまだ日が浅いのに、なんだかもうすっかり長い付き合いのような雰囲気だ。
「いただきます」
ズルズルとラーメンを食べながら、ふと気になったことを聞いてみた。
「浜田はさ、あの子のどういうとこが好きなの?」
「ぶフっ、」
「汚い!」
「な、なんだよいきなり…!」
「別にちょっと聞いてみただけじゃん。焦りすぎ」
ほんとわかりやすいな…。こんなんじゃ本人にバレてんじゃないの?情けない浜田になんだか興醒めして、ラーメンに意識を戻した。ラーメンはちょうどいい麺の固さに、まったりとしたスープが絡んで美味しい。これだよ求めていたのは。満足。
「女の子らしいとこ…?なんかかわいー感じ。が、する」
「ふーん」
「おまえ…、聞いたんだからそんな適当な返事すんなよ…」
「ごめんそこまで興味なかった」
うううううくそーっ、と言って、浜田はズルズルとラーメンを啜る。食べるの早いなーと思いながら大量にのったもやしをもぐもぐ噛んだ。
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いま気づいたんですけどここまで全話なにかしら食べてる。食べてばっか。。
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