冬道



「ぎゃー さむい!」
「………。」
「さむいさむいさむいよぉ、いずみ!しんじゃう!このままじゃしぬうう!」
「………。」
「もうやだ帰りたいよ〜〜。いずみー帰ろうよーねえさむいよ凍死する前に帰ろうよいずみい〜〜!!」
「あーもううっせえ!!!」


急にがおっと吠えた泉に驚いて、ヒイっと変な声を出してしまった。泉はぷりぷり怒りながら学校に向かって歩を速める。あ、ちょっと置いてかないでよ!そんなにぷりぷりぷりぷりスタスタスタスタしなくてもいーじゃないの!

休日の朝に英語の補習だなんて、ただでさえ泉は機嫌が悪かったのにこの寒さじゃあ更に苛々してしまうだろう。(あとあたしがウザかったから。うん認める)でもあたしも一緒に補習受けてあげるんだからそんなにピリピリしなくてもいいじゃないの。ねえ?


「受けてあげる、じゃねーよ。お前の補習も自業自得だろ」
「あとちょっとだったもん!ギリギリアウト!」
「アウトなんじゃねーか!」


もうお前ヤダ疲れる。あと歩きづらいから離せ。冷たく言い放った泉にがっちりと絡めた腕を振りほどかれそうになって、慌ててしがみついた。


「だからうぜー!」
「やだよさむいんだもん!けちけちしないでよ泉とあたしの仲じゃん」
「席が近いだけだろーがっ」
「さむい!ハナミズ出てきた!」
「ぎゃああ近寄ンな汚ねぇ!」


わーわー言いながら歩いていると、段々からだがホカホカとあったまってきたように感じた。泉も同じなのか、さっきみたいに不機嫌じゃなくて今はぎゃはぎゃは笑っている。


「っ、つかお前鼻まっかじゃん!ぶは、ダッセ!」
「なにをう!泉だってほっぺ赤いよ!」
「お前もだよ!」


泉のほっぺを両手でびたんと挟むと、泉も負けじとびたんとしてきた。そこではたっと目が合う。ありゃ、なんだこのポーズ。道端でするにはちょっと大胆じゃありませんこと?勢いこそあったものの、思わず見つめ合う形になってしまってドキっとしてしまった。泉に。…って泉も見るからに動揺してんだけど。


「…とりあえずチューかましとく?」
「!! しっねぇよハナミズ女!」


…うん、あたしと泉じゃ色気もへったくれもないようです。




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