噂の後輩くんについて



一年生のツナシ・タクト君は、まわりにオーラが見えるほどの美少年で、そのうえピュアでとっても可愛い男の子だそうだ。

「からかうと顔真っ赤にしちゃって、それがすごく可愛くてね〜…」と嬉々として語る友人を見て、私も興味が湧いた。ツナシ・タクト君ってどんな子なのかな。そんなに可愛いのならぜひ私も拝みたいものだ。


思い立ったが吉日、すぐに一年生の教室に向かった私は簡単に彼を見つけ出すことができた。赤い髪の美少年という情報だけで充分。成る程、あの顔立ちは目立つ。
―――…さて、友人に教えてもらった「からかい方」を試してみるとしよう。

隣の教室から廊下を渡って、窓際のタクト君の席に近づく。コンコン、と窓を叩けば、タクト君の視線がゆるりとこちらに滑った。それからその目が丸くなる。その様子になんだか違和感を感じたけれど、特に気にせずお決まりの台詞を口にした。


「ねぇ、ガラス越し、アリな人?」


さあさあ、どんな反応を見せてくれるのかなピュアな美少年は?同級生のみならず年上のお姉さんたちまで夢中にさせてしまう可愛さはどんな?

わくわくしながら返事を待っていると、タクト君は爽やかな微笑を見せてカラカラと窓を開けた。そして私の肩をガシっと掴む。…あ、れ?


「ガラス越しは、どちらかというと、ナシです」
「う、うん…そうらしいね…知ってる…」
「先輩、知ってたの?」
「えっ、あ、ごめんなさい…」


タクト君の予想外な反応にあたふたしてしまう。誰かたすけて、と思い教室の中に視線を行き渡らせても、次は移動教室なのかいつのまにか誰もいなくなっていた。な、なにこの展開……


「タタタクト君!ごめんね、ちょっとからかってみたくて…!」
「いえいえ。僕、ガラス越しじゃなければアリな人だから」


いま なんて ?

微笑を絶やさずそう言ったタクト君に、私はターゲットを間違えてしまったのかと目眩を起こしそうになった。だってこんなの話と違う!私、こんなの聞いてな…


「イッツア チャーンス」


そう言ってにっこりと笑ったタクト君。どうにも逃げられない私は、噂と違う美少年とガラス越しじゃないキスをしてしまいました。




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