おそろい


「りーおー!」


がばあ!突然背後から抱きつかれてうひゃあなんて情けない声があがる。振り向けば、にひひと悪戯に笑った彼女がいて、オレもつられて笑顔になった。


「うひゃあ、だってー!変なのー!」
「うわひっどー!いきなり後ろから飛びついといてなんだよー!」
「うはは、ごめんねりおー。ねえねえ、これあげる!」


得意げに笑う彼女の手には、まぬけなカオをしたくまがたくさんプリントされているヘアピン。おお、かわいー!オレの言葉に、彼女はそうでしょー!と嬉しそうに笑った。


「りおーとおそろいにしようと思って!」


ほら!そう自分のこめかみ辺りを指す彼女。なるほど、そこにはまぬけなくまがいた。手のひらにのせたヘアピンは水色で、彼女の髪のはピンク。


「つけたげるよ」


そう言って手を伸ばした彼女は、アレ、という顔をして動きを止めた。なに?と聞けばむううと眉をしかめる。


「…届かないよ、りおー」


ああ、そうゆーこと。オレよりずうっとちっさい彼女の身長では、頭に触ることは無理だ。おんなのこ、だなあ。はーいと廊下に座り込むと、彼女はオレの前に膝をついた。


「りおー、ふわふわー」


ふへへ、なんて変な笑い声を出しながら、彼女はオレの前髪を手で梳く。オレの髪を触るとき彼女は必ずほわっと笑うから、オレは自分の髪がふわふわでよかったと思うのだ。ぱちん、と軽い音がして思わず閉じた目を開ければ、目の前で彼女が満足げに笑っていた。にこにこ、にこにこ。オレもつられて笑う。ああ、なんかいいなァ、しあわせ、だ。


「りおーかわいー!」


そう言ってぱああと笑顔を見せる彼女。可愛いって言われんのはあんま好きじゃないけど、彼女が喜んでくれてるからまぁいいかな。「おそろいだねえー」「うん!」「なぁお前ら」

彼女の頭の上のほうから降ってきた声に顔を上げると、呆れたような顔をした準サンがいた。彼女も準サンに気づいていなかったみたいで、「準サンせんぱいだあ!」と驚いている。


「廊下のはしっこに座り込んでなにしてんの」
「準サンせんぱい見てください!かわいいでしょー」


自慢げな彼女に合わせて準サンににへらと笑うと、準サンは疲れたような息を吐いた。えー?


「お前ら見てると体の力抜けるっつーか…うん、今日も平和だな」


そう言い残して、準サンはオレたちに背中を向ける。と、振り向いて「まぬけな頭」と笑った。「「ええええ!」」同時に声をあげるオレたちに、またくつくつと笑って階段を下りてゆく。


「ま、まぬけだって…」


があん、とあからさまにショックを受ける彼女。まぬけなのはくまの顔だけじゃなくて、オレたちの頭もだそうだ。でもオレは、このおそろいの頭を結構気に入っていたりする。


「は、はずす…?りお…」


しょぼんとした彼女を見て、準サンに一言文句を言ってやらなければと思った。(たぶんなにか言い返されるんだろうけど)彼女の頭をぽんぽんと叩いて、このままにしよ、と笑う。にこにこ、にこにこ。そんなオレに、彼女もつられて、笑った。




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