触れる



「…なに言ってんの?」


榛名の、心底呆れたような、蔑むような視線が気持ちいい。そんな顔も格好いい!ステキ!私はキミの何もかもが好きだ!そう言えば青ざめる榛名の顔。これはもしかしなくてもドン引かれている。いやだがしかし


「腹筋を……舐めたい」
「クソキモい」


ちょっと榛名くん口が悪いよ!お母さんそんな子に育てた覚えありません!と言えば、育てられた覚えありませんという月並みな言葉が返ってきた。まったくもう面白くないゾ。
無断で、服の上から榛名の腹筋に触れる。「おいやめろ変態」とかなんとか聞こえるけど無視。ああやっぱり、イイ。すごくイイ。


「榛名のすべてが好きだけどその中でも腹筋は超タイプだよなにこれ私のため?」
「ちっげーよ!乗るな!」


榛名がツンデレなのは重々承知なので、私は榛名の膝に乗り上げたまま更に無断で邪魔な服を捲り上げてやった。その下から覗く魅惑の肉体。あ、これ某雑誌の表紙にありそうなコピーだな。
ストイックに鍛えられたその筋肉に直接触れてみた。はあ、どきどきする。指先でそっとなぞってみたり、手のひらをひたひたと当ててみたりしてその感触を確かめる。榛名の体温は高くて、触れたところがじわっとあたたかい。私がひたすらに触れているその間、榛名はなぜか、無言だった。あ、気がつけば私も。


「…おまえ、目がエロい」


ぼそっと呟かれた言葉に見上げれば、榛名がまじまじと私を見ていた。視線が絡む感じがして、どきどきして、あたまがぼうっとする。息をつくタイミングがわからない。「こっち見んな」と、榛名がたじろいで、私はそのとき自分が欲情していることに気付いた。

欲望のままに、榛名のお腹に舌を這わせる。キモいとは言われたけど、ダメとは言われてないもんね。おへそから上に、そっと、でも味わうように舐め上げると、榛名が微かに息を漏らしたのがわかった。その声にゾクっと心臓の裏側あたりが疼いた。愛しい。榛名、好き。その身体に頬ずりするように顔を寄せると、肩をぐっと押された。

あ、拒絶された、
と思ったのはその瞬間だけで、後ろに押し倒されながら見えた榛名の目はしっかりと私を見つめていたから、なんだか嬉しくてちょっとだけ泣きそうになってしまった。


「榛名」
「ぜっっってー、おまえが悪い」


うん、私もそう思う。にやけるのを抑えられなくて、えへへと笑って榛名の首に腕を回すと、噛みつくようなキスをされた。いやほんと、噛みつくような。二度言いました。優しさは何処に。
榛名の熱い舌の隙間から「すきだよ」って言ってみたけれど、聞こえているのだろうか。もうなんだっていいけど。




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