はしっこだけ愛してあげよう



「せんぱい!寒いです!」
「知らねー」


先輩の鬼ー!だとかなんとかわあわあ喚いているのは、なぜか俺によく付きまとってくる1年。試合のあった次の日、昨日見ました!付き合ってください!と初対面にも関わらずそんなことを抜かした変な奴だ。
前を歩いていた足を止めて振り向けば、シンプルなグレーのマフラーに埋めた顔の、頬や鼻はほんのり赤くなっているのがわかった。冬なんだから寒いのはしょーがねえだろ!と言い返せば、「抱きしめてくれたっていいじゃないですかー!」と頭の痛くなるようなことを叫んでくる。あー、めんどくせー


「抱きしめる必要がどこに」
「あたためてほしくて!」
「彼女じゃねー奴を抱きしめるか」
「じゃあ彼女にしてください!」
「ぜってー嫌」


べ、と舌を出してまた歩き出す。俺は早く帰りたいんだっての。
せんぱいいいぃぃ!と後ろから追ってくる声に耳を塞いで、スタスタと足を早めた。


「榛名先輩っ、!」


ぐ、と背中を掴まれて軽くのけ反る。なにしやがんだおめーは!と振り返った先に見えたのは、寒さゆえに赤くなった頬、マフラーに埋まった顔、おまけに目をうるうるさせてやがって、不覚にもどきりとした。


「ぜんぱ、い〜〜〜」
「え、(うるうるっていうか…)おまえ泣いてんのかよ!?はあ?なんで!!」
「ぜんばいがいっつもあたしに冷たいの、むがづくんです〜!あたしは本気でっ、ぜんばいが好きなのにい゙ーーー!!」


ばーか、ばかやろー!と喚き始めやがったせいで、まわりの通行人の視線が俺達に突き刺さる。「おい、バカ!静かにしろって!」なんとかなだめようとしてもわあわあ泣く。ったく、ガキかよ…!

強く腕を引くと同時に、ぽすんと倒れ込んでくるそいつ。「ふぇ」と小さく驚いた声が聞こえた。小さな体を抱え込むようにして、はああとでかい溜め息を吐く。


「なに驚いてんだよ。お前がこうしろっつったんだろ」
「で、でも……」
「いい年して泣き喚くんじゃねーよ」


さっきまでの様子とは正反対に、俺の腕の中でおとなしくなっている。ずび、と鼻をすする音が聞こえて無意識に頭をぽんと叩いた。


「…お前の気持ちもわかったからよー」


一度腕の力を強めてからゆるりと解放する。けれど、奴は直立したまま動かない。「おい?」その様子に顔を覗き込むと、突然がばりと顔を上げた。


「あ、あたしっ、もう先輩の彼女ですか!?」


は あ ?


「…な、に言ってんだオメー…」
「だってだって、彼女じゃない奴は抱きしめないって言ってたじゃないですか!そんな先輩があたしのこと抱きしめてくれた!」
「お前がうるさく喚くから仕方なくだろ!!」
「…先輩が抱きしめてくれたからなんでもいいやー」


くそっ、なんなんだこいつ!まじでペース乱される…!

すっかり機嫌を良くしたバカはへらへら笑っている。歩き出した俺の後ろについて来ながら、誇らしげに「あたしの粘り勝ちですね!」と言うから、そうだなと笑ってしまった。



―――――

めんどくさい後輩に付きまとわれ振り回されるハルナサンダー


title:Que sera sera



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