スターブルーマーチ



眼下のアスファルトを蹴ると、ぱしゃ、と水滴が跳ねた。買ったばかりのぺたんこなエメラルドグリーンのパンプスに、透明なボタンがちょこんとのっかる。すっかり晴れた空には虹がかかっていて、あたしはそれを眺めながら水玉の傘をぱたりととじた。ふと足下を見るとパンプスから芽が出ていた。さっき跳ねた水滴が栄養となったのだろう。お日さまの光を浴びたそれはするすると伸びて、華奢な水色の花が咲いた。しゃがみこんで花に触れると、くすぐったそうにふらりと揺れる。可愛い。

しばらくそうしていると、キキッとブレーキの音をたてて目の前に自転車が停まった。


「なにしてんの」
「あ、こーすけ。遅いよー」
「わり、虹作ってたら藍色が足りなくなっちまって」


孝介は雨上がりに虹をかけるアルバイトをしている。最近ようやく満足のいく形が作れるようになったんだって、こないだ嬉しそうに話してた。孝介の作った虹を見上げて綺麗だねって言うと、だろ?って歯を見せて笑った。孝介が嬉しそうだと、あたしも嬉しくなる。


「あ、ねえ、見て」


お花が咲いたの。孝介に足を突き出してパンプスを見せると、目を丸くした。それからいいなあ、と呟く。いいでしょ、あたしは得意げに笑ってみせた。


そろそろ行こうぜって言われたから、あたしは孝介に掴まって後ろに立ち乗りをした。ふわりとお気に入りのワンピースが揺れて、自転車がすいと動き出す。今日は何処へ行くの?孝介に聞くと、彼は少し考えてから「虹のふもとの宝箱、探してみようぜ」ってイタズラっ子みたいに笑った。宝箱を埋めたのは孝介なのに。きっとなにか素敵なものが入っているんだ、心地いい風を受けながらあたしはもう一度虹を見上げた。



title:怪物にハグして



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