海常長編 | ナノ


▽ みだれちゃんとうどん組と。?



 ボクが審神者さんに呼び起こされたとき、少し息が苦しかったし身体が重かった。でもボクは審神者さんに呼ばれたのが初めてだったから、こんなものなのかなって思って、そのまま審神者さんの霊力で人形を得た。
 得て早々に感じたのは冷たさで、目を開けたとき、何故かボクは冷却水の中に浸かっていて首を傾げた。


「こりゃ、驚いた…。君が手を滑らして鍛刀したばかりの刀剣を冷却水に投げ入れたのも十分な驚きだったが…」
「女士か」
「女士ですございますなぁ」
「主、女士ってアリなのか?」
「知らねえよ!?男士しか実装されてないって俺は聞いてるし!ってかナシでも刀解しねぇよ。と言うか、そもそもうどん組は何で此処に居るんだよ…あ、ちょ、大倶利伽羅?」


 袴を履いた男性(多分審神者さん)とその他多分ボクと同じ様に霊力で人形を得た刀剣さん達が5振位いて、冷たいのも忘れてその人たちを見ていれば、入口であろう所に立ってた褐色の肌の人が上着を脱いで布を纏った人に預けるとボクの方に来た。近付いてきたその人を見上げれば、首を傾げながら訊かれる。


「お前、名前は」
「み、乱藤四郎。ボクと乱れたいの?」
「俺は大倶利伽羅だ」
「うわわっ…」


 大倶利伽羅がボクの両脇に手を差し入れてザバァッと冷却水から持ち上げてくれる。そのまま大倶利伽羅さんの左腕に座らされるような抱き方をされて、彼の右手がボクの上着についてる装具やベルト、ボタンを外していく。審神者さんと白い人(多分刀剣)が慌てて止めようとしてくるけど、意図を察したらしい鳴狐がボクの側にやって来て脱がすのを手伝っていて、布を纏った人が預かっていた大倶利伽羅の上着を着せてくれた。


「主、それでどうすんだ?乱は最近よく女の子に生まれたかったと言っているだろう?」
「らしいな。俺は直接聞いたことはないが…」
「本来なら顕現出来ないが出来ていると言うことは別の刀剣として扱ってるって事だろうが…、心中穏やかじゃないと思うぜ?乱本人も、粟田口派も」
「けどなぁ…、他に乱が縁ある刀剣がいないだろ」
「それならば問題ございませぬ!我らうどん組に迎え入れます故!」
「……まぁあの大倶利伽羅が抱えて下ろさねえし、それでいいか」
「あの、ボク本人って、此処に既にボクは居るの?居るなら、ボクを刀解してもらわなくちゃ…」


 ボクの言葉に、審神者さんが頭をガシガシ掻きながら近付いてきて、俺がお前の主だ、よろしくな。と今更ながらの挨拶をしてくれてから口を開いた。


「男士である乱藤四郎が既にこの本丸にいる。本来なら、刀剣男士しか顕現されないと俺は政府から聞いているが、お前がこの場にいることは事実だ。俺の刀剣になったからには、刀解なんてしねぇ。いいな」
「…分かった」
「っつーかどっちも乱で紛らわしいんだが、コイツにあだ名決めねえか。ああ、俺ァ同田貫正国だ。うどん組だ」
「俺もうどん組で、山姥切国広という」
「あだ名かぁ…あっと驚くのがいいな!」


 白き人の言葉をうどん組の人たちが一刀両断して、あーでもないこーでもないと話し合っていて、ボクは此処にいる本当のボクと仲良くなれるかなと考え込む。考えに沈んでいたボクが気付いたら、鍛刀していた部屋から別の場所へと移動中だった。その途中で、知らない刀剣に掛けられた言葉に頭が白くなる。

『乱は面白くねえだろうな、女の子に生まれたかったっつってて、叶わねえ話だって分かってても考えるのに、女の子の自分が来たらよ』

 ボクは、本当のボクを苦しめるだけなのかな。
 途中で主さんや大倶利伽羅たちが何を言っていたのか全く頭に入ってこなくて、広間らしきところで紹介されたときに視界に入ったボクより濃い桃色の髪をした‘本当のボク’の表情に顔を伏せた。絶望した顔。ボクが主さんに呼ばれたから、ボクが間違って女の子の人形なんかを得ちゃったから。

 ボクさえ、居なければ、本当のボクはあんな顔しなくてすんだのかな。

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