海常長編 | ナノ


▽ 海常なんちゃってホラーA


「唐突ですが、起きられたので状況を説明します」
「お、おう」
「私達が今居る教室は此方の青い磁石で、此方の階段からこの青い磁石までは全ての部屋が施錠されていたそうです。校内は幾つかの教室を除き、全て消灯されておりスイッチを何度押し直してもつかないとのこと。
 その為、柔らか系男子くんとモリヤマくんが懐中電灯と後輩くん3名を探しながら約1時間の散策に出てます。
 スマホは圏外ですが、タイマーや時計などの時間は正常に動くようで、後30分くらいで二人が戻ってきます。貴方の目の前にあるモデルガンは念のための護身用に持っていてください。柔らか系男子くんとモリヤマくんも持っているので。
 何かご質問は?」
「此処が何処だかはまだ分からねえこと前提なんだよな?」
「はい」
「不自然にその黒板の地図が途切れてるのはそこから先は見に行ってない?」
「はい、柔らか系男子くんらは此処で目覚めて、そのまま歩いて此処まで来たとのことなので、他の部分はまだ不明です。帰ってきたら増えるかもしれませんが」
「廊下からの音がしねえけど、本当に行ってるのか?」
「ある程度近くまで来ないと物音が聞こえないんですよ、何故か」


 ふぅん、そんなもんか。と机に腰掛けて考え込んでいるのは、先程まで気を失っていたカサマツくんで。
 彼の目が覚めた丁度そのとき、黒板とにらめっこしていたわたしと目が合うなり、驚いた顔をされた。まぁ目が覚めたなら、変な疑いをかけられては堪らないと言わんばかりに、わたしが唐突な状況説明を始めたら、一番近くの机に腰かけた。何かカサマツくんとはテンポが楽に会話できるな、ふむ。


「お前は外に出たりしたのか?」
「カサマツくん護衛の為に1歩も出てないですね。目覚めたからと言っても、あと30分は此処で待機ですけど」
「小堀と森山は後輩3人って言ってたんだな?」
「(コボリ?)確か」
「お前は連れとかいねえのか?」
「生憎、いないですね」
「……ぼっち?」
「ち が い ま す !」


 なんだこいつ。失礼な。
 何か聞いちゃいけねえこと聞いたかな的な顔しながらそんな失礼なことを聞けるこいつはマジ勇者。
 30分弱して帰ってきたら柔らか系男子(恐らくコボリくんとやら)くんとモリヤマくんは一人の後輩くんとやらを無事連れて帰ってきていた。ラ行が言えない後輩くん。起きてるカサマツくんを見て飛び付いたモリヤマくんを容易く足蹴にする彼はちょっとかっこいい。ちょっとだけ。と、言うか、喉乾いたな。飲み物調達してこようかな。


「俺も行く。現状把握してえ」
「じゃあ自販機探し行ってきます」
「気を付けてな」


 多分コボリくんに見送られて、その教室を後にする。懐中電灯は見つけられなかったとのこと。スマホのライトつけるかな。とりあえず、自販機探しはするけど、やっぱり懐中電灯欲しいなと意見を述べれば、じゃあ職員室行こうぜと言われる。そこはあの二人も探そうとしたけど、鍵閉まってたと言ってなかったかしら。


「アイツら扉しか施錠確認してねえだろ、多分」
「ははーん?窓の施錠確認をしろってことですね?」
「どっか一枚位鍵開いてんじゃねえかな」
「そんなかけ忘れなんてことありますかね?こんなダンジョン的な場…」


 窓に触れながら廊下を歩いていたら、1枚だけカラッ…と開いて、何故かそこを凝視してしまう。開いてたし。何か、開いちゃっていいのかなと思いながら窓から職員室に入れば、カサマツくんも後から職員室に入ってくる。何とも言えない顔をしている。言い出しっぺながら、まさか本当に開いてると思ってなかったんだろう。
 とりあえず、その職員室では構内案内図のコピーと懐中電灯4本と空の斜め掛け鞄、ガムテープを確保してまた窓から廊下に出る。唯一施錠されていなかった窓にガムテープで×印を作って貼っておく。カサマツくんがドアが開くか試していたけど、どうやら完全にはまっていて動かないらしい。どんな設計なんだろうか。


「お前本当に女子かよ」
「失礼な」
「ま、怯えられて泣かれるよりマシだけどよ」


 自販機探しがてら、校内をうろついていたときに、何か影みたいなスライムみたいなベトベトンみたいな変なものが左右に揺れながら進行方向に居て、デカイ口を開けた。ああ、これ、俺らのこと襲おうとしてんのかと状況を理解した瞬間、俺と隣を歩いていた女子は同じ行動をとった。それは、進行方向に倒れていた机と椅子の1つを思いっきり、その黒い影に向かって蹴った。机と椅子が当たった黒いのは変な奇声を発しながらゆっくり砂が飛ばされるみたいに消えていった。
 それを見届けて、さーて、自販機は何処にあるかなと本来の目的に戻すこいつって本当に女なのか?あー、でもあれか、中村がやってた射影機とかってやつを使うホラーゲームも出てくる女は泣いたりせずに強かったな。


「あ、あった」
「普通に稼働してますね、カサマツくん何飲みます?」
「あー…スポドリ」
「了解しました」


 金を入れてがこんがこん落ちる音がする。
 こいつ何本買ってるんだ?と首を傾げたところで、振り向いたソイツにはい持ってとペットボトル4本渡される。全部スポドリ。ソイツの腕の中にはスポドリ2本とお茶のペットボトル。ああ、何、人数分買ったのか、コイツ。面倒くさいので、全部俺が引き取って斜め掛けの鞄にいれた。それから何かラベルのかかれてない缶が2つほど出てきたらしく、それは抱えていた。
 取り敢えず飲み物を確保したので、小堀らが待ってる教室に帰ろうと歩き出して、さっき黒いのが出てきたところには何も出てこなかった。けど、他の机とかがないところに出てきて隣のコイツから手渡されたのはラベルに何もかかれてない缶。また、デカイ口を開けたそれにほぼ同時にその缶を投げつけた。俺が投げたのは口の中に入り、コイツが投げたのは恐らく目があるであろうところに直撃していた。容赦ねえな、マジで。

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