海常長編 | ナノ


▽ 海常なんちゃってホラー@


 唐突だけど、わたし日頃の行いはそれなりに良いと思うの。
 成績は上の中を維持してるし、運動だって可も不可もなく人並みに頑張ってるし、家の事だって手伝ってるし、まぁ部活はしてないけど、その代わり委員会頑張ってるし。素行良好成績優秀だと評価してもらってるから、だからね、日頃の行いはかなり良いと思う。から、何でこんな仕打ちを受けなきゃいけないのか全くもって理解できないのよね。


「わたしなんかしたかなぁ…」
「……」


 取り敢えず、拾ったってか見つけたモデルガンにこれまた一緒に置いてあった銃弾を補充しながら、側で気を失っている同じ高校のジャージを着ている男子生徒を横目で確認する。この古びた校舎だか何だか分からない所でわたしが目を覚ましたとき、隣で既に気を失っていたのがこの人だった。一応、彼の頭の下にはわたしのジャージを畳んでおいてある。
 モデルガンに弾を詰めてるのに特に意味はないけど、何かこのやたら広い部屋の中に置いてあるってことは必要なんだろうなと思うのでやってるだけである。因みに詰めてるのは四丁目である。この人が起きたら一丁は持っててもらおう。此処の空気が良くないのだけは分かる。でもこの人が起きてくれないとわたしも此処動けないんだよねぇ…。なんて溜め息を吐いて椅子に座って未だうなされてる男子生徒を眺めていれば、自分の呼吸の音と彼の声以外の物音が外から聴こえて、外へと通じる廊下の方を見て、一番近くに置いていたモデルガンを手にとってガシャ、と引く。なるべく音を立てないように椅子から離れて、うなされてる彼を庇うように片膝を付いて腰を低くし、扉へ向けて念のために発砲できる状態のモデルガンを構える。


「あ、開いてる。開いてるぞ、小堀!」
「ああ、そうみたいだね。けど、森山、敵じゃないこと話さないと危ないと思う」
「へ?」
「大丈夫だよ、俺たちは敵じゃない。寧ろ助けてほしい」
「…取り敢えず、扉は閉めてください。念のため」
「わかった、ありがとう」


 入ってきたのは海常のジャージを着た七三分けの美人系とものすごく背が高い柔らか系だった。同じ高校の生徒だし、わたしの後ろでまだうなされてる彼と同じジャージだったからそれだけ言ってモデルガンを下ろして立ち上がる。誤発砲に気を付けなきゃいけないなぁ…これ。引かなきゃ良かった。七三分け美人系に何か鳥肌が立つ内容を捲し立てられたけど、ぶっちゃけ聞き取れなかった。そんなことより、この人のこと聞かなきゃ。


「…彼のこと知ってますか?」
「! 笠松!!」
「え!?笠松!?」
「ど、どうしたんだ!?何で笠松が此処で寝てるんだ!お嬢さん、教えてくれませんか!」
「……詳しいことは分からないですけど、わたしが此処で目が覚めたときは既に彼はこんな感じになってました」


 七三分け美人系にお嬢さんなんて言われて鳥肌が立った。彼はカサマツって言うんだ。何か嘆いてる七三分け美人系改め残念系男子くんから目を離して、驚いてる柔らか系男子くんを見上げて、何でこの部屋に来たのか訪ねてみた。それで彼が説明してくれたことによると、
・此処は何処かの校舎ぽいこと
・自分とモリヤマ(残念系男子くんのことらしい)が目を覚ましたのは1年1組
・他の部屋は施錠されていて、この部屋(何も表示はなかったと言う)だけが確認してきた中で開いていたこと
・カサマツくんは同じ部活の主将
・多分、あと3人同じ部活の後輩がいると思う
ということらしい。君は?と聞かれたので、図書室から出ようとしたのに、気付いたらジャージで此処にいた、彼を一人にするのも後味が悪いのでずっと此処にいたことを説明した。


「あの銃は?」
「この部屋の散策をしてたら見つけたので、念のため」
「なるほど…。俺も念のためにひとつ持ってもいいかな?」
「ええ、お好きなのどうぞ」
「ありがとう」


 柔らか系男子くんは少し大きいやつを選んだ。手が大きいからだと思う。羨ましい。因みにわたしはさっき警戒のために引いてしまったやつを持っている。柔らか系男子くんが、大人しくなったモリヤマくんにも一丁渡して、念のためにと説明していた。使わないに越したことはないけど、わたしはまだ外を知らないし、彼らは3人の後輩を探さなきゃいけないわけだけど、何が起こるか分からないから。
 どうしようかなと考え込んでいれば、柔らか系男子くんが一応俺たちが通ってきたところだけだけど、見取図書こうかと提案してくれたのでお願いする。任せてくれと微笑んで黒板に向かい、見つけたチョークで向かって描いてくれる。本当に分かるところだけなので、中途半端に線が途切れる。


「少なくとも3階まではあると思います。まだ階段は続いてたから」
「階段の向こうがどんな構造になってるかは暗かったから確認できてないんだ、ただ、俺達が目覚めた教室から此処の階段まではすべて施錠されてた」
「暗い、ですか?」
「うん、電気がついてないから夜の校舎を歩いてる感じ。この教室を含めていくつかは電気ついてるみたいなんだけど…」
「そうなんですか」


 1年1組が一番左端だったようで、そこから2組、2年1組と並び、昇降口を挟んで2年2組、2組の向かいに御手洗いがあってその隣に階段。(2年2組の先も多分、教室があるとのこと)
 階段を上がって左側に御手洗い、向かいが職員室、職員室の右側に放送室、5年1組、5年2組と並び、表示のない教室が2つ続いて、2つ目一番右端がこの教室らしい。


「懐中電灯が必須アイテムってことになりますかね」
「確かにあるにこしたことはないね」
「あと可能なら保健室で気付け薬的なアイテムを俺は所望したい!それか早川!」
「何で早川?」
「うるささで笠松が起きるかもしれないだろう?」
「(気を失ってる人間を起こすのに騒音で起こすのはどうかと思うんだけどなぁ…?)」
「探索に出掛けるとしても、笠松が起きるまでは誰かが残ってなきゃいけないだろ?」
「じゃんけんで勝った人が残る!」


 なにその決め方。
 モリヤマくんとやらの発言で、仕方ないなぁと柔らか系男子くんが賛成?してしまうので、参加せざるを得なくなる。3回のあいこの結果、わたしが勝ってしまったので、引き続きカサマツくんの護衛だ。1時間探してなにも見つからなかったり、危険を感じたらすぐ帰還することを約束して二人は旅立った。お互いのスマホのタイマーを同時にスタートさせたから、ちゃんと1時間で帰ってくると思うんだけど。


「(……圏外か)」


 電波は立たないから、連絡もとれないっと。さて、彼らが帰還するまでの間、わたしはどうしてようかとタイマー画面のままのスマホを机の上に置く。もう一度、この部屋の探索でもしますか。

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