中篇 | ナノ


▽ 五話



「……君は一体どうやって毎回毎回部屋に忍び込むのかな」


 リヴァイが初めて参加した壁外調査で、リヴァイは馴染みの二人を亡くしたけれど、エルヴィンに忠誠を誓うことになった。調査兵団としては、リヴァイの馴染みの二人やフラゴン達多くの兵がが亡くなったのは手痛い打撃だった。もろもろのフォローやらなんやらを済ませて自室へと戻れば、鍵をかけたはずの扉に鍵が掛かっていなくて、溜め息を吐いてノブを捻る。手前にある執務室のソファーに脱ぎ捨てられたジャケットを掛けて寝室へと続く扉を開けばやはり居た唯一の同期。
 こうして彼がやって来るのはいつからかは覚えてないけど、確か班長とか分隊長とかそういう立場になってからだったような気はしてる。エルヴィンは壁外調査で多くの仲間を失っても皆の前では平然とした体で居るのに、壁内に帰還した夜は決まって人のベッドにうつ伏せている。毎回必ず鍵はかけているのに、それでも忍び込んでいるのだから諦めもつくだろう。
 エルヴィンがうつ伏せている自分のベッドに腰かけて、纏めていた髪を解く。この同期は確かに冷酷と言うか、そんな一面もあるけれど決して傷付かない訳ではない。うつ伏せになって動かないくせに、別に眠っているわけではないエルヴィンの意外とさらさらな金髪を暫く漉いていればやっと顔をこちらに向ける。


「ひどい顔してるよ」

「…そうかな」

「今回、君のあの陣形がなければ全滅してたとわたしは思うよ。まだわたしたちは生きてる、今回学んだ失敗を生かせばいいことだよ」

「………そうだな、」

「それでそろそろわたしも眠りたいんだけど?」

「………」

「いや、だからズレてスペース作るんじゃなくって…まぁいいや…」


 こうなったコイツは梃子でも動かない。壁際にズレた為に出来たスペースに収まり、腰までしかかけていなかった毛布を肩まで上げてエルヴィンとは逆の方向を向いて横になる。枕はエルヴィンに取られているので、こうなったときの枕はエルヴィンのかったい腕だ。しかも若干高い。


「どうせこっちを向くなら最初から向けばいいじゃないか」

「………寂しいなら寂しいって素直に言いなさいよ、エルヴィン」


 こういう日のエルヴィンは、少し寂しがり屋に変わるから、折角落ち着いた体勢をごろんと転がれば、目の前にはエルヴィンの胸板。胸板といっても服は着てる。おやすみと、呟けばああおやすみと既に眠そうな声で返されるので瞼を閉じた。目覚めた朝には既に通常運転のエルヴィンに戻っているのだから、まぁ何とも不思議な男である。
 それから、リヴァイ。フラゴンが殉死したこともあって、リヴァイは暫くわたしの班が預かることになってはいる。けど、わたしがデスクワークで執務室に居ることが多いので、エルヴィンの班に混ざってることが大半を占めているのが現状で。報告書の書き方とかやらは合間合間を縫って色々指導してはいる。落ち着かないのか、時々昼夜問わず…ま、夜が多いけど。わたしの執務室にやって来てはわたしのデスクの引き出しの前に座り込むことが出てきた。非常にやりにくい。座り込んで何してるってうたた寝してるだけだしね、この子。


「また寝られないの?」

「…………」

「環境が変わったこともあるだろうけど…、そんなに他人の出す音が気になる?」

「……………お前には分かんねえだろうよ」

「寝るならベッドでね、リヴァイ。また貴方をソファーやらベッドやらに運ぶのはごめんよ」

「………お前が運んでんのか」

「ソファーで貴方が目覚めたときはね。ベッドで目覚めた時はミケよ、あの人なんか知らないけど通りかかるんだもん」


 エルヴィンもリヴァイが此処でうたた寝してることには気付いてて、時々遭遇するから運ぼうかって聞いてくれるけど、後日知ったときリヴァイが嫌がるだろうからと断ってる。その点まだザカリアスならば口も堅いし、余程のことじゃない限りネタにもしないだろうしね。またうたた寝し始めたリヴァイを視界の隅で確認して、ため息を吐きながら彼お気に入りの膝掛けを身体に掛けてあげた。……なーんかわたしの執務室なのに彼らのお気に入りの物が増えてくなぁ…。


2015/04/18

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