中篇 | ナノ


▽ 4話



 特別作戦班、通称リヴァイ班。その班は現在拠点を旧本部に移して巨人化できる少年であるエレン・イェーガーの監視を主にリヴァさんが行っている…………筈なんだけどなぁ…。潔癖性なのが災いしたのか幸いしたのか、現在までにやったことと言えば掃除だけと言っても過言ではない。ってか既に監視すらしてないってどういうこったね?


「掃除は順調かい?エレンくん」

「あっ…補佐官……!」

「あーあーそんな堅苦しい呼び方しなくていいって。こっちまで肩凝るし、で、どう?掃除は」

「…駄目だしばっかされてますよ」

「あの人潔癖過ぎるからねーってか掃除中だからって監視はしないでいいのかね?どう思う?」

「えっ!?いや、あの…!?」

「ってかエレンくん偉いよね、わたしがエレンくんの立場だったら監視がないことをこれ幸いに適度にサボるのに」

「てめえは何を不真面目なこと吹き込んでやがる」


 地下室を掃いていたエレンくんに話し掛けていれば、上から降ってきたのは我らがリヴァさんの声で、振り向けば階段のところに腕を組んで立っていた。三角巾に口布スタイルなお掃除リヴァさんは終わったのかと聞いてくるので、完璧と一言だけ答えておく。
 エレンくんと顔を合わせたのは審議所から彼らが帰ってきて、本部の地下に取り敢えず保留って感じで待機させられていた時だった。リヴァさんに怯えていて何をしでかしたのだろう、この男はと思い、ハンジさんに訊ねれて頭を抱えた。そうだこの人奇行種だった。暴走しかけてるハンジさんをモブリットに任せてミケ先輩に訊ねに行った。最初からミケ先輩に訊けば良かった。ついでにミケ先輩逹のお子さんが二人とも調査兵団に来る予定なことも教えてくれた。討伐数がトロスト区のあれで既に上が討伐数7補佐討伐5、下が討伐数5補佐討伐7らしいってなにそれすげえ。成績を訊ねれば、上位10人に確実に入る実力を持ってるはずなのに調査兵団一択だからとほどほどに手を抜いていたのでそこそこのものだったようで。流石お二人の子供であると納得した気がする。


「何か用事?」

「茶」

「エレンくんもおいで、休憩しよう」

「は、はい!」


 それだけ言って踵を返すリヴァさんに溜め息を吐いてポカンとしてるエレンくんを手招きすれば、ばたばたと寄ってくる。うーん、彼の方が大きいけど可愛いな。第二の弟にしたいな、いやでもこの子を弟にしたら噂のアッカーマンちゃんが面倒くさそうだな、どうしようか。紅茶を淹れるための準備をしていれば近付いてくる気配にどうせだからと人数分のカップを用意してしまう。


「地下でサボってたろ?」

「サボってないサボってない。来て早々失礼な」

「だって任せられたのは地下じゃないだろ?」

「そういうそっちこそ厩舎あたりにいたじゃない。どっこいどっこいよ」

「終わったから任せられたんだって」


 現れたエルドはリヴァさんたちに気付いてないのか、いつもの軽口みたいな感じで口を開いた。それにわたしも答えていれば、周りから音がしなくて首をかしげる。エルドも同じように変だと思ったのか首をかしげるので、リヴァさんたちがいる方を見れば、理解不能だと言う顔をされた。いや、何でそんな顔されるの?


「ヘルゼさん…何で顔だしてないのにエルドが居た場所分かるんですか。エルドもエルドで何で分かるんだ」

「え?普通だろ?」

「え、エルドが何処に居るかなんて大体だけどわかるよ。それくらい普通でしょ?」

「いや、それ普通じゃないですから!!」

「てめぇらはミケか」

「あ、ごめん、流石に巨人の気配は察知できないわ。ってか兄弟ならお互いの場所分かるの普通じゃないの?」

「…………………ちょっと待て」

「うん?」


 リヴァさんが片手を前に出して待ったをかける。なんだなんだ、どうした。かりかりとエルヴィンさんから頂戴してきた内地のクッキーという焼き菓子を頬張っていれば、ガタタッとペトラ、グンタ、オルオが椅子から立ち上がって驚愕の表情でわたしと並んで座っているエルドを見る。


「きょっ……兄弟…だと!?」

「ヘルゼさんとエルドが…!?」

「信じらんねえ……!!」


 わーお、何というか不思議なリアクションを頂きました。聞いてねえと睨んでくるリヴァさんにだって聞かれてないし、ファミリーネーム同じだから気付いてると思ってたと答えれば、だからあの時手繋いで来たのか…と一人納得してるようだった。エレンくんはご兄弟揃ってリヴァイ班だなんてすごいですね!と目をキラキラさせていた。うーん、エレンくんにはこのまま純粋な子でいてほしいなー。第二の弟にしたい。
 それから取り敢えず落ち着いたはずの彼らと、兄弟だからと言って互いの気配が分かるのは普通じゃないと力説されて驚いたのはこっちだった。それが今まで普通だと思ってたのに。壁外でも分かるのかという問いには二人揃って頷く。エルヴィンに報告しとくからなと言うリヴァさんは本当エルヴィンさん大好きだと思うの。


「あ、じゃあ兵長と補佐官が結婚したらエルドさんは兵長の弟さんになるんですね」

「…………。」

「ゲホッガホッゴホッ」

「ゴホゴホッ」

「………ハッ!」

「………はっ!!」

「いやいやいや、オルオとペトラも言われてみればって顔してないでさ。エレンくんさ、よく天然って言われない?と言うか考えがぶっ飛びすぎて流石のお姉さんもびっくりだよ」


 まさかの飛び出したエレンくんの発言にエルドとグンタが紅茶で噎せて、ペトラとオルオはハッとしたリアクションを披露してくれたものの、リヴァさん本人は相変わらずの変な持ち方をした紅茶を口につける瞬間で硬直していた。


「………………おねえさんって年かよ、お前」

「少なくともリヴァさんよりかはエレンくんとは年近いですー。ってか苦し紛れに突っ込むとこそこかい」

「姉さんって呼んでもいいんですか!?」

「何がどうしてそうなったのかわかんないんだけどエレンくん可愛いから許しちゃおう!ってかエルド大丈夫?すっごい噎せてるけど」

「俺、兄弟って憧れてたんで嬉しいです…!」

「いやー、何この幼気な健気少年」

「へ、兵長と姉さんが……って、そんな予定ないですよね!?兵長ならもっといい女性選り取りみどりですよね!?」

「おいこらエルド、親愛なる姉さんに向かって何て言いようだ。ってかリヴァさんって実際人見知りだからそんなに選り取りみどりしてる余裕ないよ?あっ言っちゃった」

「はっ!?え、じゃあまさか……!?」

「安心しろ、その予定はまだない」

「ちょっと待ってリヴァさん、まだって何。まだってなんなの。そもそも恋人ですらないですよ」

「今さら俺にお前以上の他の女を見繕えと言うのか」

「いやいやいや見繕えよそれくらい」

「人類最強とその補佐の遺伝子が合わさったらとってもすごいサラブレッドが産まれるだろうね!」


 とんでもな発言をしたのはいつの間にかやって来ていたハンジ先輩で、いつ来たあんた。と言うか私たちそんな関係じゃないんですが、エルドもそこで頭抱えてぶつぶつ言ってないで。そしてリヴァさん、あんたは悪くないなんて言わないで、熱でもあるの?


「とまぁ冗談はさておいてさ」

「どうしましょう、先輩なのに激しく殴りたいです」

「あはは、段々貴女も色んな意味でリヴァイに似てきたね!エレンの巨人化に対する実験の日程を詰めたいんだけどいいよね?」

「ああ」



2015/05/08

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