▽ 二話
今回も壊滅か。
壁外調査での拠点で合流してくるはずの班員を待つが、何時まで経っても姿を見せない。何度も経験してるその状況に舌打ちをすれば、ひょっこり姿を現したのは俺にとって2回目の壁外調査前から補佐官に任命された女で、俺を見てから辺りをキョロキョロしてやっぱり?、みたいな顔をする。
「一応報告。左足を喰われたけれど生きてる班員1名、衛生班に任せてる」
「…生き残ったのか、1人」
「珍しくね」
エルヴィンが立案した陣形を取り入れてから生存率は上がったらしいが、俺の班の生存率は変わらない。巨人との戦闘が多い配置になるから、戦闘があった壁外調査の場合、拠点に班員が来れれば上々。目の前で部下の死を確認できればまだいい方だ。
そんな中でもこの女は、どの壁外調査でも必ず生き残る。怪我の有無はあれども、必ずこの女だけは俺に付いてくる。俺にとって忘れられるはずもない一度目の壁外調査後、心臓を捧げて消えていった奴らの名前を刻まれた石碑の前で一度だけ泪を流した姿を見た。噂で亡くなったフラゴンがコイツに想いを告げようと考えていたらしいと耳にした。コイツの胸元では一組のリングが揺れているのを知っている。逃げるようにばばあの執務室に入り浸った。ばばあは知っているようで知らないように話すから少し楽だった。
「………お前は怪我ねえのか」
「…、…ない」
「…そうか」
「君は?」
「ねえよ」
「それは良かった」
最後尾のやつらが中へ入っていくのを見て、俺も腰を上げる。負傷したとしても生きてる班員がいるならそれで構わない。踵を返した俺の後ろで明日は槍でも降るかななんて空を見上げてるソイツが居たことなど知りもしなかった。
帰還して脚を喰われた奴は技巧班に移る事になったらしい。元々訓練兵団時代から技巧に優れていたようだし、技巧班ならば飛べなくても問題はないだろうとの判断をされたらしい。わざわざ異動する前にと挨拶に来た奴は車椅子に座ったまま笑って敬礼してみせた。珍しく、俺の班に居て3回の壁外を乗り越えた兵士だったのを思い出した。
「リヴァイ分隊長の班に居れたことは自分の誇りです」
「…誇り?」
「はい!」
「……お前は脚を失ったのにか」
「…そこ突かれると自分も痛いですが、兵士として戦えなくなった訳ではありません。自分がこうして此処に居られるのは分隊長のお陰ですから」
「………そうか」
「はい」
「なら、俺の立体機動装置を回すまでにしっかりやっておけよ」
「…………はい!!喜んで!あっ補佐官にもお伝えください!ありがとうございましたと!」
「んなん自分で言え」
「お願いします!失礼しました!」
おい、と呼び止める間もなく、ソイツは車椅子で廊下の角へと消えていく。……そう言えばあの女何処行った。
2015/04/29
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