白石のしなやかな柔肌は、いくら近くで眺めようとも色褪せはしない。
髪の毛と同様に少し色素が足りない白い肌を見つめて、本当にこの人はテニス部なんだろうか、と頭の片隅で呟いた。

己のものとは全くの逆ベクトルにある白石の肌。
白石の肌は日焼けをすれば赤く痛そうに爛れるのだが、九州育ちの真っ黒な自分の肌は、ちょっとやそっとの紫外線では歯が立たない。長年浴び続けた日の光が俺の肌を鍛えたのだ。いわば難攻不落の皮膚。別に威張ることでも無いのだが。


「…千歳?なに考えとるん」


眼下から聞こえる愛しい声に、そういえば最中であったと意識を取り戻した。

素直に「ちょっと飛んでた」と漏らすと、「ほんまにお前は余裕やな」と少しむくれたような声で咎められる。
白石に比べて(というよりは同い年の連中に比べて)そういう経験が豊富な俺に、白石は少なからず不満感を抱いているようだった。だから俺がちょっと慣れたようなことをすると、白石は分かりやすくむくれるのだ。
余りに可愛いらしくてたまに辛抱できずに抱きついてしまうのだが、そんなとき白石は思いの外嬉しそうな反応をする。目には見えないけれど。


「そんなこつは無かよ、…ちょっと…見とれてただけばい」
「……どうだか」


棘のある口調で強がっても、そんな赤い顔じゃあ迫力が無い。
この容姿だ。褒められることには慣れているだろうに未だにこんな反応をしてくれるのだ。これではたまらないわけである。


「あ…っ、ちょ、千歳」
「なんね」

白石が焦っている理由はわかっていたが、むしろあんなウブなことをされて反応しない身体がどこにある?と問いたい。

「あ、当たっとる…」
「知っとう」

慌てふためく白石の額に軽く唇を押しあてると、途端に白石は大人しくなってしまった。
理由はキスをした瞬間、更に露骨に白石の太ももにそれが当たってしまったからだ。(無論故意的にである)


「……お前…一体何に欲情したん?」

呆れたように吐き出す白石の髪を掻き分け再び額にフレンチキスをけしかける。小さく音を立てて唇を離すと、白石はまたしてもウブなことに頬を染めた。


「何にって言われても、白石はどこ見ても綺麗でむぞらしかばってん、欲情してもしょんなか」
「なにがや!」

騒ぎ立てる白石の唇を己の唇でパクリとくわえ込み、その細腕に己の手のひらを重ねて身動きを止める。
んーんーと呻く白石が予想以上に可愛いらしくて思わずほくそ笑むと、白石が膝で俺の反応しかけたそれを攻撃してきた。

可愛いと思ったらすぐこれだ。

本当に白石はたまらない。



白い手のひらと浅黒い手のひらを重ねて、俺はもう一度「たまらんたい」と呟いた。

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