怪しまれないように、と決めたばかりなのにやらかしてしまった。 それにしても俺は部長だなんて、そんな大層なことをしていたのか…。 自分のことながら驚きである。 「え、ちょ、白石。マジでそれってボケなん?ツッコミ待ち?俺ネタふられとるんか?」 眼前であわあわとしている男はどうやら俺がボケたと思っているらしく、なにか良いツッコミをしなければと焦っていた。 単純でアホな人で良かった…。 「じょ、冗談やって!ホンマお前、単純なやっちゃなあ!」 「あ!おま、騙したんか!」 「悪いか?」 何とか言い繕ってこの場は凌いだが、この人物の名前すら分からないのだ。 いつボロが出ても可笑しくは無い。 気を付けないと。 「ええから早よ部活戻ろうや」 とりあえずは俺が居るべき場所が見つかった。今は最早それだけで十分だと思える。 そこに行けば何か思い出せるかも知れない、と俺は歩き出す。 あ、そうだ。 「ところで…、き、きん…ちゃん…って……」 先ほど登場した人物のことが気になって慎重に声を出してみる。 早いところ全登場人物を把握しておきたい。 あれ、なんかRPGみたいになってきたな。 「あぁ金ちゃんならな、『ボール当ててもうたー!アカン!白石に毒手されるー!』って青ざめてたで!」 どうやらモノマネらしい。 少々オーバーな様子で再現をしてみせる目の前の男。 似ているのかどうかは分からなかったが、おそらく雰囲気はこんな感じなんやろうな、というのは伝わった。 …て、いうか……。 「ど…く、しゅ………?」 ま、まさか、この、左腕の包帯、は。 怪我とかやなくて、ど…毒手……なんか…? 毒手って、アレやんな。 あの、漫画の……………。 カーッ 「お?白石?どないしたん?」 「え!?いや、あの、何でもあらへん」 「でも、ごっつ顔赤なっとるけど」 「いや、だ、大丈夫や。うん、全然、大丈夫」 …やばい。 めっちゃ恥ずかしい! なんで!?なんで俺こんな恥ずかしいことしとるん!? コスプレっておま…っ!こんな日常的にしとるモンやないやろ!? なんなん!?俺って一体何キャラなん!? わっけわからん! 己の左腕の正体が明らかになった途端、自分の存在が恥ずかしくなってきた。 一体何のためやねん。一体何の得があってこんな黒歴史を自ら積み重ねるようなことをしてんねや。…おかしいやろが! |