ガラッ



「…………っ!」


瞬間、明らかに自分のものではない力で先に戸を開けられてしまい絶句した。
いくらプランも覚悟も完璧でも、不意打ちなんて絶対卑怯やわ。

そんな俺の目の前に現れたのは、男だった。


「あれ、白石起きたん?」

脱色したのだろうか、とにかく髪の色が凄い。鮮やかな金髪である。(いや、俺も人のことは言われへんか)

そして、先程ガラス越しに見たジャージと同じものを着ている。
まさか今は体育の時間で、こいつは迎えにでも来た同じクラスの奴なんだろうか?

「…白石?どないしたん?」
「えっ、俺?」

そういえば、ついさっきもこの人は「シライシ」と言った。
そして今も。
ということは俺の名前は、シライシなんだろうか?

「大丈夫か白石。まさか頭打っておかしなってしもたか?」

またシライシ、と呼んだ。
どうやら俺はシライシで間違いないらしい。

「…あたま?俺、頭打ったん?」
「なんや、覚えとらんのか?」
「あ、あぁ」
「まあ、それもそうやろな。なんせ後ろからガツーン当たっとったもんなあ!」

ハハハ、と笑いながらその男は何かが後頭部に当たるジェスチャーをしてみせた。

「え、何が当たったん?」
「何って、ボールに決まっとるやろ!金ちゃんが打った球を小春が受けきれなくてな、白石んとこまで飛んでったんや」

キンチャン、コハル。
いきなりそんなに登場人物が増えられても困るっちゅー話やで。

とにかく俺はシライシで、キンチャンという人が打ったのをコハルちゃんが何らかの理由でぶっ飛ばして、そして何かのボールが俺の後頭部に当たった、っちゅーことやろ?(相当曖昧だが今は仕方がない)

もっと詳細を知りたかったが、余り聞きすぎて怪しまれても面倒なのでとりあえずはそれくらいの情報で満足することにした。


「もう大丈夫なら部活戻るか?何やみんな部長がいないってことで少したるんどるねん。終わりのミーティングくらいは出た方がええと思うけど」

部活、と言った。
何だ。このジャージは部活のジャージなのか。体育着とばかり思っていたが、どうやら俺が事故に見舞われたのは部活中の出来事だったらしい。

「へえ、部長どうしたん?」
「……は?」
「え?」

部長が居ないと聞いて質問をしただけのはずが、目の前のソイツは俺を見つめて目を見開いていた。

「え、って。…まさか今のボケ?」
「ボケって…どういうことやねん」
「どういうもこういうも…。白石ホンマに大丈夫か?…部長はお前やろ?」




しまった、と思った。


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