千歳の家を出て学校へ向かう。
学校は駅前なので、千歳の家から徒歩10分と電車で15分で着く。

「ウチ、もし千歳と違うクラスになっても毎日会いに行くさかいな」
「え?俺が会いに行くったい」
「や、ウチが行くってば」
「…うんにゃ、絶対俺が行く」
「………何でや?」

たとえクラスが違おうとも千歳のためなら毎日でも通ってやるで!という宣言をすると、何故か自分が行くと聞かない千歳。
何でそこまでかたくなになるのが分からず首を傾げる。

「だってうちんクラスの男に蔵んこつ見られたくなかもん」
「………な、……」
「だから、俺が会いに行くばい」
「そ、そんなんウチやって…!千歳のこと見られたく無い!こんな歩くフェロモンみたいな寝起きの千歳も、実在したトトロみたいなふわふわした千歳も、全部ウチのもんや!」

言い放たれた言葉にキュン死にしそうになりながら叫ぶと、千歳は恥ずかしそうにふわりと笑った。

「……あんまむぞらしかこつ言うと学校行けんようになるたい…」
「や、やだ千歳!朝っぱら何言うとるんや!……、帰ってからにしいや」

こんな欲望に忠実な千歳も好き。ていうか全部好き。

「蔵、赤くなっとうよ?」
「もう!誰のせいやねん!」
「あは、俺…やね?」

悪戯っぽい顔で笑いながら手を握られて、思わず俯いてしまう。
…なんでこんなに男前やねん…。反則なんてもんやない。アウトに限りなく近いアウトやろこんなん…。

中学からの付き合いになる千歳なのに、手を繋いで登校するのは初めてのことだった。
いつも遅れて学校に来たり、もはや来なかったり。思えば一緒に登下校したことすら数回だったような気もする。

そんな小さな幸せにふふふ、とニヤけていると、突然立ち止まった千歳が「あ。」と言った。

「千歳?どうしたん?」
「スカート」
「………へ?」
「もうちっと、長くならん?」

そう言いながら、繋いた手と反対の手でスカートの裾を摘まんだ千歳は、「短すぎる」と呟いた。

「…そう、やろか?」
「こんな綺麗か足、安売りするんはもったいなか」

校則違反にならない程度に腰元で折ったスカートを見下ろし、「…千歳がそう言うんなら」と二折くらい直す。

「こんくらいでええ?」
「…うん、出来ればそれくらいがいい」
「分かった。明日からはこうする!」

千歳の理想になる。
それがウチの信念や。
いつもは言わない千歳の嫉妬に嬉しくなりながら再び歩き出す。

綺麗か足、やって!
あは。どうしよう褒められた!

ルンルン気分で歩いていると「上機嫌やねえ」と言う声が上から聞こえたので、「千歳のせいやもん」と笑って駅に向かった。

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