「いつの間にお袋と仲良くなったん」 「んー、初めて来たときに掃除手伝ったら何やめちゃめちゃ褒められてん」 「…まあ俺は全くせんからな」 「それから料理とか一緒にやってたら自然と仲良うなった」 女の親と自然に仲良くなれるのなんてせいぜいお前くらいだろうなと思ったが口にはしなかった。 「食べ終わったらお皿くらい自分で洗わなアカンよ?男子だって今の時代、炊事洗濯くらいこなせないと使いモンにならへんからな」 「やろうと思えばできる」 「アーホ。そんな理屈はやってへんから言えることなんやで?やろうと思ってできるなら今やりなさいよ」 「口調までオカンにならんでよ。なんか混乱する」 中学生(男子)がここまで所帯染みたことを言って不気味じゃないのは、やはりそれが白石だからなんだろう。 「なー白石」 「ん?」 「たとえば俺が全く家事やれないまま大きくなってさ、どうしようもなくなって、飯も満足に食わなくなって、洗濯モンも溜めに溜めこんじまったらさ」 「…おん」 「白石に、電話してもええ?」 心に浮かんだ言葉をそのまま吐き出してみた。だってそうじゃろう。今のこの状況は何だ?まるで俺の通い妻か何かのようじゃないか。 せっせと洗濯物を畳み、俺の食生活を心配し、少しは小言も呟いたりして。あろうことか割烹着を持参、など。 そう思わざるを得ない状況下じゃないだろうか。男子諸君、この意見に異論があるやつは男じゃない。そうだろ? 「……アホちゃうか…」 「…え」 「そんなん…、何で今更確認せなアカンの…?俺は、いつだって仁王くんのお世話くらいするし。どこにおったって飛んでくに決まっとるやん…」 畳み途中の俺のトレーナーを両手で握り締めながら顔を赤くする白石に、俺は全ての脳神経が切れるのを感じた。 まずい。これはまずい。 俗に言う理性という我慢の限界が、俺の中で許容量を越えた。 俺は今、目の前のこの触れ難いほどの愛しい存在を抱きしめざるを得ない状況なんじゃないだろうか。男子諸君、意義を唱えたやつは男としての何かを失っている。そうだろ?そうに決まっている。 未だに視線を合わせられないでいる白石の両頬を固定して、俺は思い切り「好きじゃ!」と叫んで腕の中に閉じ込めた。 もうこの生きるトキメキ製造機を手放すことはできない、と固く胸に決心して。 甘くなりすぎて驚きました |