「仁王くーん、ご飯がええの?パンがええの?どっちー?」

「……白石、その恰好は…どうしたんじゃ」


寝起き一発目に割烹着姿の白石。俺は未だかつてこのシーン以上の破壊力を持った図を見たことはない。
Tシャツに短パンというラフな格好の上から真っ白な割烹着を纏っている白石は、俺を布団ごしに揺すりながら朝飯のメニューを聞いていた。

「これ?あかん?」
「や、あかんっていうか…」

色んな意味で良くはない。

「いやな。いつも仁王くん家にはお世話になっとるし…、家事でも手伝お思て大阪から持ってきてん」

そう言いながらくるりと回って「似合っとるやろ?」と笑う白石に、俺はもう何もツッコまないことにした。事実似合い過ぎているのだから仕方がない。
割烹着から伸びる白い腕と足を眺めながら、俺に引けをとらないその色白さに溜め息をつく。但し白石の肌は俺の不健康そうなそれとは違うけれど。

「で、米か?パンか?あ、それとも麺がええか?」
「…あー…えー、ん、いらん、かな」
「え?何でや?具合でも悪いん?」
「や、朝は…よう食わんから…」
「はあ!?何でや!もう、だからそんなに不健康そうなんやで?朝を制する者は一日を制するんや!ちゃんと食べなアカン!」
「(……オカンが居る)」

昨晩久しぶりの久しぶりに会うことができた美人な恋人とは、いわゆる遠距離恋愛という付き合い方をしている。
大阪と神奈川。
まあ最悪の距離というほどでも無いが、お互いにテニスの強豪校の部員同士であるため会う時間などほぼとれない。
ましてや片方は学校の期待を丸々背負っている部長、という立場だ。
加えてこの白石という男は酷く努力家で、才能や生まれ持った天賦の技術などには頼りもせずにここまで上ってきたという生粋の努力型天才である。自主トレーニングを欠かさない白石にそうそう暇などない。
更に極めつけに未成年という壁が立ちはだかる。大阪と神奈川間を一人で行かせてしかも一、二泊させるような親などそういない。白石の家なら尚更である。(だが白石はどんな手を使っているのかは知らないが会いに来てくれる)

うちなら色々とユルいから友人が一人来ようと一、二泊しようと特に問題はない。(しかしただの友人では無いんだぜとは言えないでいる)

「がっつりがキツイならお粥でも炊いてもらおか?」
「だからいらんって、水でええもん」
「はあ?あんなノンカロリーのもんで朝を凌げるわけ無いやろ?テニス部としてあるまじき食生活やな」
「俺は試合前にしか身体つくらんの」

白石がなかなか食い下がらないので俺はついに折れて少量食べることにした。
ちなみに白石は俺が起き出す前にお袋と一緒に朝食を摂ったらしく、お袋が仕事に出かけた後俺が朝飯を食べている中で洗濯をしていた。

「なー白石」
「んー?」

キッチンの横の居間で正座して洗濯物を畳んでいた白石は作業を止めずに返事だけする。
何故15歳の男子がそれをやっていて様になるんだろうか。





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