ハルは俺の膝の上に跨ったままじっとこちらと見つめている。お互いの吐息がかかる程の距離に、俺と同じ顔があって。その顔は泣きそうに歪んでいて。
いや、えっと。…うん?

「…あのさ、えっと…ごめん。どういうことなのかサッパリ分からんのじゃけど…」

頭は悪いほうではない、が、こんなパターンは余りにも範疇外だ。
パラレルワールドというものを信じることにしたことだけでも俺としては革命的なことなのに、それに加えて異世界の自分が俺に助けを求めに来たという事実を受け入れろ、だなんて。…SFにも程がある。

「マサくん…、やっぱり……俺のこと、信じてくれないんだね」
「え、いや。その…」
「でもこれは本当の話だよ?…信じられないのは仕方がないことだけど、このままだと君だって危ない」
「は…?」

ひらりと俺から降りると、ハルは俺の隣に腰掛けた。

「…ヤバい奴らに追われてるんだ」

そう言って眉を下げ俯きながらハルがしきりに襟足をイジる癖を見て、こんなとこまで同じなのか、とぼんやり考えた。


「僕らの世界ではね、“God Children”という組織が全てなんだ。政治も経済も貿易も、表の事情も裏の事情も全部その組織が牛耳ってる」

出てきたゴッドチルドレンという単語を聞いて俺の眉間に皺が寄る。酷く耳に慣れた単語な気がして胸のザワつきが治まらない。

「組織って言っても、数人なんだけどね。同じ系列に無数の部下は居るけど、その中枢は実質7人しか居ない」
「7人って…、そんな小組織でひとつの世界を牛耳れるもんかよ」

次々と語られる情報にどうも信憑性が持てず、俺は半ば吐き捨てるようにそう言った。
だってそうだろ。7人って…、あり得ないとかそういう次元すら超えた人数だ。

「小組織…なんかじゃない」
「え?」

途端に小さくなった声を不思議に思って隣を見やると、ハルは身体を縮めて小刻みに震えていた。

「ハル?どうした?」
「…能力者」
「…………え?」
「奴らは全員、能力者、なんだ」
「脳力、者…だって?」

何を言っているんだと言い捨ててやりたかったが、ハルの余りの怯えように俺はそれを飲み込む。
これ以上俺の言葉で“自分”が恐れの渦に嵌まり込んでいくのは見たくなかった。


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