なんやねん、これ。

ガチガチに固まった身体を無理矢理動かすと、全身の筋肉が軋んだような音がした。
目覚めたのは、静寂に包まれたどこかの部屋。真っ白だ。

真っ直ぐ見つめた先には白い壁。いや、天井だろうか?
どうやら俺は横たわっているらしい。重力を身体全体に感じる。
のそりと上半身を起こして周りを見渡すと、俺が寝ていたのは決して柔らかくないシングルサイズのベッドであったことが判明した。
これじゃあ身体もガチガチになるわけやな。

首を左右に振り180度見渡してみると、ベッドの周りには天井と同じ真っ白な布が垂れ下がっている。おそらくカーテンだろう。

頭の回転は悪くない。
ここは間違い無く医務室、保健室、病室のいずれかである。
とすれば俺はなんらかの怪我もしくは病気のためにここに居るはずなのだが…、何故なのかそんな記憶も無かった。

どこかが痛むわけでもない。
苦しいわけでもない。
憶えてない。
ここに居る理由も分からなければ、ここがどこなのかすらも分からない。

本来ならば不安に駆られるような状況だが、俺は不思議と落ち着いている。この薬品のニオイや消毒臭さがとても心地よかった。

と思っていれば、何やらチャイムのようなものが鳴り響く。
そうか、ならここは保健室なのだろう。

俺は学生だったのか。
いや、学生だ、と言われたなら、そうですか、と思うことはできるかも知れない。
しかし今の俺では何かを言い切ることなどできはしなかった。記憶も無ければ自信もない。

頭は、悪くないはずなんだ。
考えろ。わかるはずだ。
何故ここにいる?

必死になって脳内の全てを掻き回し海馬の奥底を探る。



「……駄目や、何もでて来いひん」

しばらく思考した後、答えは今の段階では出せないと結論付けた。落ち着いてから考えるのが得策であろうと思ったのだった。


「……って何やねんコレ!」

何となしに自分の手のひらを見ると、自分の左腕から指にかけて包帯が巻かれていることに気が付いた。真っ白な包帯。まだ新しい。

なんでや?
包帯の上から恐る恐る自分の左腕を握り込んでみるが、特に痛むわけでもない。当然怪我をした、という記憶があるわけでもない。

何やねんこの包帯…。
気色悪いわ…。
誰が巻いたんやろ。

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