昇降口を出てテニスコートの前を通ると、休憩中だった丸井が近寄ってきた。

「仁王!お前大丈夫なのかよ?」
「あー、あぁ、もう平気じゃ」
「マジいきなり倒れるからびびったっつーの」
「すまんすまん」
「今日早退だろぃ?これお見舞い!」

そう言って渡されたのはいつも丸井が頬張っているガムだった。
丸井が人に食い物を渡すなんて珍しいこともあるもんだと思いながらも素直に受けとると、「じゃお大事に」と笑って丸井はコートに戻っていった。
意外といい奴じゃの、とはにかみながらまた歩き出そうとしたとき、今度は赤也がばたばたと走ってくるのが見えた。

「におー先輩!」
「おー赤也」
「身体大丈夫っスか?」
「あぁ、寝たら大分良くなったぜよ」
「マジっスか!それは良かったッス!」

元気いっぱいな後輩を見て少し元気が出たような気がする。

「仁王先輩が倒れたって聞いて皆今日はかなり心配してたッスよ。今晩はゆっくり休んでくださいね!」

皆が心配していたというのを少し意外に思い、幸村を横目でチラリと見やると「皆仁王が居なくて寂しかったみたいだね」とからかうように笑われた。
思わず「真田もか?」と聞くと、「仁王って天然?真田が体調管理できない人間を心配するわけ無いじゃない」と言われて、分かってはいたが吹き出してしまった。

「じゃ仁王先輩また明日ー」

そう言って赤也が手を振りながら去り、その場には幸村と俺だけが残される。
丸井や赤也との会話の間に大分戸惑いは消えていたのだが、こうやって改めて2人きりになってしまうと何を話してよいのか分からない。

「あ、幸村…、部活いいのか?」

咄嗟に思い付いて言葉を発してはみたが虚しく響いて更に気まずさが増した。

「あぁ、今日はお前を家まで送る仕事があるからね」
「え?」

病人を一人で帰らせるわけにいかないでしょ、と付け足して幸村はふわりと笑った。
え、というか、え?

おどおどする俺に幸村は「気にしないで、俺がしたいだけだから」と言って俺の腕をひいた。





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