ぱちり。 すっきりとした頭で目覚めると、真っ白な天井が目に入った。 どうやら保健室のようである(サボるときにしか訪れない場所だ)。 重い身体を起こして頭を掻くと、髪を結わえていた紐がしゅるりとほどけてしまい舌打ちをする。 うなじに後ろ髪が垂れた。鬱陶しい。 「…あー…、…だるい…」 未だ覚醒し切っていない頭をどうにか回転させ、とりあえず喉が乾いたので水を飲みに行こうとベッドと外界を遮っていたカーテンを開けた。 「………まじか」 瞬間、薄暗くなった空が見えて溜め息が出る。まさかこんなに眠り呆けてしまうだなんて。 部活は……もう終わってしまったのだろうか。 時計を見て更に溜め息を深くしながらも保健室を出た。 否、出ようとした。 「やぁ仁王、やっと目が覚めたのかい」 聞こえた声と、視界に入り込んだ人影に思わずぎょっとする。 俺が戸を開けた瞬間、そこには二人分のテニスバッグを持った部長様が立っていた。 俺の付き添いとしては少々珍しい顔に正直面食らってしまう。 「……ゆ、ゆき、むら?」 「ん?なに?」 「な、なにって…」 どう言えばいいのか分からず言葉を濁していると、体調は良くなった?と聞かれたので余り腑に落ちなかったが曖昧に頷いた。 「それは良かった。じゃあ帰ろうか」 幸村は俺の分のテニスバッグを背負ったまま保健室の電気を消し、なんとなしに俺の左腕を掴み歩き出した。 あまりの自然さについ流されそうになったが、何とか意識を集めて二歩前の幸村に声をかける。 「幸村、お前、部活はどうしたんじゃ?まさかもう終わってしまったんか」 「ん?まだやってるけど?」 「え、じゃあ行かんと」 「…駄目だよ、仁王は病人なんだから。今日は早退させるよ」 病人って、と俺が口ごもると、幸村はいきなり立ち止まり振り返った。 「…睡眠不足、栄養不足、過労。お前は一体自分の身体を何だと思ってるんだ」 言葉と裏腹に幸村は酷く心配そうな顔だった。 思わず「すまん」と言うと、「謝るなら自分の身体に謝りなよ」と微笑まれる。 幸村が困ったように笑うのは珍しいなと思った。 「仁王、偏食も大概にしないとテニスにも影響してくるんだからね」 「…すまん、気を付ける」 「分かればいいよ」 じゃあ帰ろう、と再度左腕を引かれたので今度はされるがままに付いていった。 → |