私は幸村くんも仁王くんも、同じくらい大切に思っています。同じ信念のもと毎日を過ごす仲間ですから、どちらにも同じように幸せが訪れて欲しいと願っています。
だからこそ、お付き合いを始めた当初はそれはもう心配でした。
幸村くんは幸村くんで広めたい放題ですし、仁王くんは仁王くんで相変わらずふらりふらりとしていて。
このお二方は本当にお付き合いをしている同士なのでしょうか?と何度も思案しました。
幸村くんは盛大にのろける割に仁王くんとあまり時間を共有していないように見えましたし、仁王くんも特別変わった様子がありません。
お節介なのは自覚していますが、うまくいっていないのでしょうか?と不安になりました。周りの仲間たちもそう思っていたようです。


しかし私たちは、騙されていました。

仁王くんだけでなく幸村くんにまで。
2人は共謀して周りを欺いていたのです。

あの幸村くんの奔放さは、語られるのろけや流れている噂よりも遥かに親密な2人の関係を、カモフラージュするためのものだったのです。

2人の関係は決して公に認められるものではありません。私たちはかなり自然に受け入れてしまっていましたが、きっと知らないところで様々なしがらみがあったのでしょう。
そんな時期を経て結果的に落ち着いた形。それがあの2人の今の行動のようです。

だからこそ私は、2人を特別に扱わないことに決めました。
以前は少々気を遣い、2人の下校をできるだけ同じ時間にして差し上げようと奮起したときもありました。
しかしながら私のその行いは、本当に必要のないものだったのだと知ってしまったからです。

そんな小癪な真似をしなくても、2人の愛は本物です。おっと、こんなことを言うと仁王くんに「クサい」と言われてしまいますね。失敬。


「柳生?どうしたん?」

余程寒いのか、上下長ジャージを着用している仁王くんが私で暖を取ろうとしているのは察するに値します。
しかしながら私では貴方を温めて差し上げることはできません。さあ、お帰り。本当の愛の元へ。

そんな思いを込めて仁王くんの背中を押すと、とてつもなく怪訝な顔をされてしまったので、私は幸村くんに目配せをして迎えを要請しました。
貴方の大切なパートナーが、私で暖を取ろうとするほどに、寒がっていますよ。と。

やや挑発的な視線になってしまったことは謝罪せざるを得ませんが、私にとっても仁王くんは大切な存在。
もしもこの先、貴方がこの彼をこれ以上寒がりにするようなことがあれば。

私だって容赦いたしませんからね。


…おや。
これは失礼。
私は紳士代表の、紳士でしたね。

どうか今の心の呟きには、私めの名誉のためにも目を瞑っていただければと存じます。
…あぁ、ありがとうございます。

貴方の口の堅さに心からの愛と感謝を。

敬具。

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