二章 「今の悲鳴理科室の方じゃないのか?」 「とりあえず行こう!!」 そして、理科室の個室で、彼女たちが見たものは… 最強の魔女とは言い難い程泣きじゃくる東と 東にべったりと密着している、セーラー服に身を包んだアルビノの少女だった。 その光景に瑞希達は呆然とした。 「触るな!触るな!離れろぉぉぉ!!」 「えー良いじゃないですか〜東お姉様〜」 「どーこ触ってるんだぁぁぁ!!瑞希!こいつ引き離してくれ!!頼む!!」 瑞希たちの存在に気付いたのか、彼女に向かって助けを求める東 瑞希が一体どうすれば良いのか悩んでる横から、竜二が少し不機嫌そうに小雪に向かって言った。 「ほら、退いて退いて。…君、死体にしか興味なかったんじゃないの?東から離れなよ?嫌がってるだろ?」 竜二を茶化すように言う小雪。 「あーら、これはこれは生徒会長様じゃありませんの?こんな早朝になんのご用ですの?」 「…話かみ合ってないんだけど。離れろって言ってるんだよ。ほら」 竜二はそれを軽く流して、半ば強引に小雪を引き離した。 そんなやり取りを見てた阿片が思い出したかのように小雪に言った。 「小雪…家にいなかったと思えばここにいたのか?」 「ええ。お兄ちゃんはなんでここに?」 「いやー瑞希に呼び出されてね」 「だから、呼んでません」 「ひどい!」 再び肩を落とす阿片を尻目に、東がおずおずと瑞希に聞いた。 「…瑞希。こいつら誰だ?知り合いなのか?」 「まぁ一応…こちらのサングラスかけてる方が、倉橋阿片さん。で、そちらはが阿片さんの妹の小雪ちゃんです」 「ちなみに倉橋家は代々『黄泉桜』の管理人なんだよ」 「そういえばそうでしたね」 ぽんっと手を叩く瑞希。 阿片は、そんな瑞希の態度にショックを受けたが、首を傾げて聞いた。 「ん?『黄泉桜』がどうしたんだ?あと、今更なんだが、その人誰なんだ?」 「あー…えーと…ですね…どこから話せば…とりあえず、この人は…」 「お兄ちゃんこの人はね!不老不死の最強の魔術師の東さんだよ!!不老不死なの!」 「…なんで君が名前知ってるんだい」 「本人から直接聞いたの!」 竜二の質問に笑顔で答える小雪。 その事に対し、東は目をそらしながらボソッと言った。 「……その…名は名乗ったんだが。不老不死についてはその…あの…事故というか…」 東の弁明を聞いた瑞希は、いつぞや竜二に見せた黒い笑みを浮かべて彼女に詰め寄った。 「どーいうことですか?事故というのは?」 「その…えっと…」 「えっと?なんですか?はっきり言ってください」 しどろもどろになる東にピシャリと言い放って説明を求める瑞希。 気づけば手には針が握りしめられていた。 「…そこのグラサンにぶつかった後、魔術で移動してここにきたんだ。 で、その時慌てていたから、その…着地点を間違えて、壁に半身埋まってしまって、その様子を見られたんだ」 「違うよ東お姉様。床よ。床に埋まって無理やり出たもんだから、体がちぎれちゃったのよ。私も驚いちゃった。 だっていきなり人が出てきてそれも半身ちぎれて這いずってくるもんだから。でも、でもね!それは一瞬のことで、すぐ元に戻ったの!! その時確信したの!この人はあの『奇跡の魔女』だって!」 「おい待て。半身ちぎれたって…ふつう死んでいるだろ」 話の異常性に気づいた阿片がツッコミを入れる。 だが、そのツッコミに小雪はバカにしたような顔で言った。 「話聞いてなかったのお兄ちゃん?この人は不老不死の魔女なの!だから、死なないの!ね!東お姉様!」 「ヒィィ!だっから、触るな!」 再び抱きつこうとしてきた小雪から逃げて、瑞希の後ろに隠れる東。 そんな彼女をみて竜二は持っていたセーラ服を東に突きつけながら言った。 「…ねぇ東。いい加減にセーラー服着てくれないかな?さすがにその恰好でうろちょろされると後々面倒だからさ」 一瞬ビクッとした東はセーラ服をまじまじ見ながら沈黙した。 そんな東の態度が気に食わないのか頬を膨れさせた。 「むーせっかく徹夜して作ったんだよ!…そうか、東は僕の親切を無下にするんだね。酷いやい」 「それ、貴方が作ったんですか…」 「そうだよ!僕が真心こめて作ったんだよ!」 「…わざわざ制服作るとか、会長さん気持ち悪いんですけど…」 わざとらしく、おえっというジェスチャーをする小雪。 かなり引いていることがわかる。 「しょうがないだろ!制服予備のないんだから!」 竜二はちょっと顔を赤らめて叫んだ。 そんなやり取りを見つめていた瑞希は東に向かって囁いた。 「東さん、制服を着ること自体は嫌ですか?」 「…そんなことはないが」 「だったら、貴女の得意な魔術でパッパーと着替えられないんですか?」 「…あの制服をか?」 「ええ…あの人、裁縫は得意なんで質は保証します」 「…分かったよ…着るよ…」 そう言って東は無言で指を鳴らした。 すると、竜二の手にあった制服は気づけば東が着ていた。 東が着ていた服は彼女がどこかに置いたのか、その場から消えた。 「…やけにサイズが合ってるな」 「そりゃー東のサイズぴったりに作ったからね!」 「貴様は変態か!」 「えぇ!?東酷いやい?」 「いや変態です」 「変態よ」 「変態だな」 全員に変態の烙印を押されたことに不満を感じたのか、竜二はまた頬を膨らませて部屋の端っこに体育座りを始めた。 そんな竜二に少し罪悪感を感じたようで、東は竜二が作ったセーラー服を着て彼のそばに行き軽く首を傾げて 「り…竜二、に…似合うか?」 更に無意識なのかスカートの端をちょっと摘まんで覗き込むように言った。 「…似合うよ」 それだけ言ってふいっと東から顔を逸らす竜二。 また自分は何かしてしまったのかと勘違いした東は、あわあわしながら瑞希達に視線を送る。 だが、瑞希達にも彼の行動が理解できず同じように首を傾げた。 暫くの沈黙後、阿片が何か思いついたかのようにボソッとこう言った。 「竜二、もしかして東さんの事が好きなんじゃね?」 ← 前へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |