二章 * 「………でれない」 東は地面にしゃがみ込んだ。 結局、普通に校門から出ようとしても、東だけ出れなかった。 彼女だけが、なにかに弾かれるように行けなかったのだ。 ちなみに学校から出ようとしなければ、空間魔術は行えることも分かった。 「ミズキ!!貴様私をどうしたいのだ!」 「なぜ私が責められなきゃいけないんですか!」 「セキュリティの責任者の娘だからに決まってるだろう!」 一体どうなっているんだ!と声を荒げて近くにあった小石を蹴り飛ばす東。 彼女たちの会話を聞いてた竜二は、顎に手を当てて首を傾げながら瑞希を見る。 「…セキュリティになんか不具合が起きたとかは考えられないの?」 「さっき確認しましたが、どこも不具合はありませんでしたよ。ただ…」 「ただ?」 「思い出してください。会長。昨日の槍の件を」 「おい、それはどういう意味だ」 東は瑞希を睨みつける。 そんな東を一瞬だけ睨み返して、瑞希は説明を続けた。 「…もしかしたら、最後に東さんが槍を空間魔術で飛ばした時に『何か』が起きたのかもしれません」 「なんで?そう思うの?」 「あの時、あの瞬間、東さんが多くの魔力を使ったからです。考えられるとしたら、その時に彼女の魔力がセキュリティに何らかの影響を及ぼしてしまい、結果的に『ここから出れない』…閉じ込められたという現象が起こったのかもしれません」 そう言った瑞希をぎょっとした感じで見た東は、わなわなと震え 「なっ…なんとかしろ!今すぐ!!」 と叫んで再び瑞希に掴みかかった。 瑞希は、そんな東をみて、きっぱりと言い放った。 「無理です。大体あなたの魔術は構成が全く分からない。原理が分からない魔術を解析するなんて芸当、私にはできません」 「じゃあ、私は一生このままなのか!?」 瑞希の対応に腹が立ったのか、さらに声を荒げる東。 「だったら、お前の親を連れてこい!責任者なのだろ!」 「…別にいいですけど、そうなると貴女は、ますますここから出れなくなりますよ?」 「なんだと…?」 「自分の立場を弁えてください。あなたは最強の不老不死の魔術師『奇跡の魔女』、そしてこの街は『魔術師殺しの街』と言われる対魔術師専門の街です。 この街には魔術師を恨んでる人間など山ほどいるんです。『彼ら』に見つかれば、ただで済むと思ってるんですか?」 「私を脅すつもりか」 「違います。ただ現実を伝えただけです」 「と…とりあえず、しばらくは此処にいたら?こんなこと言ってるけど、瑞希は君の味方だから。ね?瑞希?」 女性陣の殺気に耐え切れなくなったのか、竜二が提案をした。 そんな竜二にほだされたのか、瑞希は深いため息をついて、彼の意見に賛同して妥協案をだした。 「はぁ…私も『彼ら』に対して好印象を持っていませんからね。貴女さえ大人しくしててくだされば、上に掛け合ってセキュリティの一事解除を願い出てみますよ」 「…わかった。その時まで大人しくしている」 彼女たちの案と街の性質から、『ここに留まる』事が最善策と考えたのか、東はしぶしぶ承諾した。 こうして、東はセキュリティ解除が解除されるまでの間、学校にとどまることになった… ← 前へ ⇒ 戻る ⇒ TOP |