イガグリ

二章

刹那


キンッ


と鋭い音が鳴り、消えたはずの東がまるで何かに弾かれたように姿を現し、勢いよく壁に激突した。
東本人も訳が分からないようで、しばらくその場で唖然としていたが、すぐに瑞希に掴みかかった。
「貴様…どういうつもりだ」
低く唸るように瑞希に問う東。
「…知りませんよ」
「ふざけるな。死にたいのか」
瑞希は否定したが、東はあくまで瑞希の仕業だと疑っているらしい。
凄まじい殺気を出しながら瑞希の首に手をかけようとした。
その時…
「待って、待って!一体何が起こったの?ねぇ?ねぇ?」
東の手を握って竜二はいつもの笑顔浮かべて彼女に現状の説明を求めた。
すると、東の顔がみるみる青くなり、そして
「わ・わ・私にふれるなぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう叫んで竜二の手を振りほどいた。
「え?え?どうしたの東?」
突然叫んだ東に驚きつつも、再び彼女の手握ろうとする竜二。
だが、その手をまた振り払う東。
振り払われても尚、竜二は彼女の手を取ろうとして、しまいには蹴り飛ばされた。
そんな竜二を横目に、瑞希は現状について考えた。

東は空間魔術を使って学校から出ようとして、弾かれて戻ってきた…
さっきのを見た限り、そう考えるのが妥当だろう。
…では、なぜ空間魔術が弾かれたのか。
セキュリティの不具合か
それともまた別に原因があるのか
空間魔術を使わなければでれるのか

思考を巡らせている瑞希の耳に、再びキンッと先ほどの音が聞こえた。
そして後からドンッという音も聞こえた。
音のした方に目をやると壁に激突している東の姿が。
もう一度空間魔術を使って出ようとしたらしいが、結果は同じだった。
瑞希は、そんな東の様子を見てぽつりとつぶやいた。


「…普通に歩いて学校から出てみましょうか」
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