イガグリ

二章


「…ここはどこだミズキ?」
そう言って瑞希を睨む東。
「さぁ…?貴女が私の質問に答えてくだされば説明します」
瑞希はそう言い放って東を睨み返した。

瑞希を睨んだまま、東は自分の置かれてる状況を確認する。
声が響いている事から、ここが大広間の様な空間だと分かった。
ご丁寧にも体の自由を奪う魔術も施されているようで、全く動かない。

「あなたの目的はなんですか?どうしてこの街に来たんですか?」
「目的目的と貴様はやかましいな。言っただろ?答える気はない。さっさと解放してくれ」
「私も言ったはずです。拒否権はないと」
「…分かった。私の目的は『黄泉桜』の調査だ。…これで気は済んだか?」
そう東が言うと、体への魔術は解かれた。
だが、まだ瑞希の警戒は解かれていないようで、彼女の武器の針は東に向けらたままだった。
「黄泉桜…なぜアレを調査するんですか?ただの桜でしょ?」
『東の目的』は分かったものの、どこか腑に落ちない様子で眉をしかめた。
そんな瑞希の様子を見て、一度深いため息をついて東はそれに答えた。
「違う。アレはあの桜は『奇蹟』だ」
「『奇跡』?」
東の言っていることが理解出来ずに再び眉をしかめていた瑞希。
その背後から急に竜二が現れて、東の話を解説した。
「瑞希違うよ。彼女が言っている『きせき』は足偏に責って書いての『奇蹟』だ」
「!?会長。なんでここに!?」
突然の竜二の出現に、瑞希はただ動揺した。

それも仕方ない。

この場所は、瑞希と瑞希の母親・千鶴だけしか入れないセキュリティの中心部分だからだ。
いくら、黒月家と親しい竜二だろうが、入れない場所のはずだ。
「全く、セキュリティの中枢部につながる扉をあけっぱにしちゃだめだろ?…あはは。大丈夫だよ?ちゃんと僕が入るときに閉めといてあげたから」
竜二は驚いている瑞希に対して、いつもの笑顔を浮かべながら彼女の疑問に答えた。
昨日瑞希によって徹夜させられた腹いせなのか、所々嫌味たらしい。
「…それはお手数おかけしました。で、その『奇蹟』はなんですか?言葉の響きから別に危険なものとは思えませんが」
瑞希は、彼の返答にますます眉をしかめたが、今の彼女の中では東の目的の意味が最優先事項らしく、話を元に戻した。
早くこの問答を終わらせたいのか、その質問に東はすぐに答えた。
「『奇蹟』とは、人には危害は加えない謎の怪奇現象の事だ。だが、『奇蹟』を起こすには人柱が必要だといわれている」
「人柱…」
「その人柱の対象は『奇蹟』によって違うんだよ。例えば牛だったり、供物だったり…人だったりね?」
「…やけに詳しいですね会長」
「えーこれぐらい常識さ。僕はこう見えても勤勉な優等生だから、結構物知りだなんだぜ?」
ふふんと胸を張っている竜二を冷めた目で見た後、東に話を続けるように促した。
「私はその人柱がなんなのか、そして『奇蹟』がもたらす影響を調査するためにこの街に来た。それが終われば、さっさとこの街から出る」
「…そうですか。完璧に信じた訳じゃありませんが、貴女に敵意が無いことは分かりました」
投げやりな感じで言うと、瑞希は東に向けていた針を下した。1
そんな瑞希に対して竜二が弁明する。
「ごめんね東。瑞希一応この街のセキュリティの責任者の娘だから、疑い深いだけで、根はいい子なんだよ?」
瑞希とは違って彼は東に対して警戒してないらしい。
だが、竜二の弁明には何もこたえず東は瑞希に素っ気なく言い張った。
「…目的を話したのだからもうここにいる必要はないよな」
「ええ…好きに『奇蹟』を調査するなりしてください」
「…世話になったな」
東はそう言って指を鳴らして消えた…
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