イガグリ

一章

「で…だ。結局あの槍はどうやって対処したんだ?」
「貴女、全然反省してませんよね!?」
「反省してるしてる。心配もしてるしてる」
「絶対してないですよね!?」
そう言い争いを繰り広げている二人に竜二が割って入って言った
「…簡単なことだよ。てか、見れば分かるでしょ?凍らしただけだよ」
「いや…それは私にも分かっている。私が、聞きたいのは何故魔術が効かない物体に、貴様の能力が通ずるのかということだ」
そう言うと東は指を槍の方向に向けて鳴らし始めた。

しばらく指を鳴らす音が鳴り響く。

「えっと…何してるんですか?」
「見てわからんか?魔術で飛ばそうとしてるんだよ」
「何をですか?」
「あの槍だ」
「「……」」
「そんな憐みの目で私を見るんじゃない!!」
顔を紅潮させながら、東は抗議する。
これで普通は飛ばせるんだよ!と声を荒げながら、近くにあった机に向かって指を鳴らす。
刹那、机は消え去り、遠くでのそれが落ちる音が聞こえた。
「成功すればかっこいい動作だけど、失敗するととてつもなくダサいね」
「しーっ会長それは言っちゃいけませんって」
「貴様ら聞こえてるぞ!」
そう怒鳴られた後、貴様らも飛ばしてやろうかと低い声で脅されたので、それ以上東の動作にちゃちゃを入れる者はいなかった。
下手に刺激して変なところに飛ばされたらひとたまりもない。
腐っても彼女はあの奇跡の魔女なのだ。
「…とりあえず、何を話していたんですっけ?」
「確か…なんで魔術は効かなくて僕の氷が効いたかって話だっけ?」
「そうだ!さっさと説明してくれ!」
東は短い髪の毛を手でくしゃくしゃにしながら言った。顔がまだ赤い。さっき言われたことがよほど恥ずかしかったのだろう。こうしてみると、自分たちとそう変わらない少女のようだと瑞希は思った。
「要は、あの槍は対東専用に作られたものだってことさ」
「遠回しに言うな。もっと簡潔に言ってくれ。パラシュート無しのスカイダイビングは体験したくないだろ?」
東は竜二に指を向けた。
「それは全力でお断りしたいから、不本意だけどもっと分かりやすく説明するね」
竜二は瑞希の傍を離れて、氷づけされた槍の近くに行った。
そして、いつもの笑みを浮かべながら説明を始めた。
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